ばいきんまんがヒーローに⁉ 親の胸も熱くする〝悪役〟の不屈の闘志 劇場アニメ「アンパンマン」最新作
身近な素材でロボット自作 弱さ認める成長も
ばいきんまんの精神性を象徴するものとして、ロボット作りが細やかに打ち出されていくのも本作の特徴だ。すいとるゾウの侵略によって荒廃した世界で、鉄製の照明や家具などを見つけたばいきんまんは、鉄を溶かしてオノやノコギリといった工具を作製。メカニックとしてのスキルをフルに発揮し、地道な作業をコツコツと続けてウッドだだんだんを生み出してゆく。 本作は仲間も武器も失った状態に放り込み、ばいきんまんの〝強み〟を浮かび上がらせる構成になっており、それでも勝てない敵に対してアンパンマンとの共闘を申し出るという〝成長〟まで描いてみせる。さらには、そうしたばいきんまんの姿に心を動かされ、アンパンマンが自己犠牲の精神を発揮する熱いシーンも用意されている。従来の劇場版に比べてアンパンマンの登場シーン自体は少ないかもしれないが、抜群の話題性に加えてキャラクターの掘り下げや構成の妙が行き届いており、完成度はしっかりと担保されている。シリーズの歴史においても、異端の名作として愛されていくことだろう。
映画ライター SYO