自分たちでしかできない世界を広げたい 山崎大輝×小野塚勇人『ストーリー・オブ・マイ・ライフ』初共演への道
自分たちふたりでしかできない世界を広げていくように
――出演者がふたりだけのミュージカルであることについてはどうですか? やっぱり出演者の多い作品とふたりだけの作品とでは、いろいろと違うところがありそうです。 山崎 キャストの人数が多いミュージカルにも出演させてもらっていますし、二人芝居も『スリル・ミー』で経験しました。ふたりの場合、自分たちだけですべてを創っていくので、すごく細かいところまで詰めていけます。言葉にしてもいいし、しなくてもいいですけど、この辺りに落とし込みたいんだなとか、どういうところを大事に表現するかとか、そっちよりこっち気味のほうが好きなんだなとか、こっちの方がやりたいのかもとか、自然とすり合わせができていく。細かいところまで、いろいろなさじ加減がしやすいような気がします。 ――阿吽の呼吸のようなことでしょうか。 山崎 お客様の見る目も、やっぱり違ってきますよね。舞台上に3~4人いたらさすがに全員を細かく見るのは難しいけど、ふたりしかいないので視線も集中する。そのお客様の集中力を逃さないように、むしろそれも使って創り上げていきたいと思うんです。 小野塚 これは当たり前のことでしょうけど、ふたりだけしかいないし楽曲も多いし、めちゃくちゃ大変だけど、セリフに追われたり楽曲に追われたりして芝居をすることは絶対にしたくない。早くこの作品の良さをつかんで、それを自分たちふたりでしかできない世界で広げていく。そこまで早く到達したいと思っています。 ――あらためて、おふたりはこの作品のストーリーの素晴らしさはどのように感じていますか。 山崎 僕は、この作品はファンタジーな部分が多々ありますけど、すごく身近な話だと思うんです。台本を読む限りで伝わってくるメッセージは、誰にでもあること。本当に何げない日常を切り取っているので、空気感もすごくリアルでいいんですよね。あと、場面もパンパン変わって結構早めのテンポで進んでいく会話劇だと感じるので、テンポ感も大事。偉そうな言い方に聞こえてしまうかもしれませんが、楽曲の使い方もすごく効果的です。ふたりの過ごしてきた時間だとか、あまり口には出さなかったような弱い部分、ウィークポイントも少しこぼれ出てしまったりするようなことも表現されている。今回3度目の上演がされるくらいにお客様に求められていることが腑に落ちる、魅力的な作品だと思いました。 小野塚 トーマスとアルヴィンは「友情」っていう言葉では言い表せない、言語化できないような関係性だ、というのが僕は一番しっくりくる。その関係がすごく伝わってくるし、楽曲は38曲あるけど、そんなに曲が多いと感じさせないような濃い内容です。しかもその歌一つひとつが印象に残る。本当に細かくギミックがある楽曲なので、歌いこなすのは本当に難しいけど、その一音一音に意味があるし、それを大切にしながら僕たちも演じていく。そこが魅力かなって思います。 ――「追いかけていたのは、君じゃなくて僕だった」というコピーも印象的ですね。 小野塚 トーマスの視点からの言葉ですね。最初はアルヴィンがトーマスに依存してるように見えるけど、それが後半に逆転してトーマスがアルヴィンに依存していたんだっていうことがわかる。それが最大の面白さかなと思います。