「命を離さないで」――羊文学が最新アルバムで切り開く境地、曲に滲むメッセージ【オリジナルインタビュー】
影響を受けた音楽、憧れの歌、人間性を形作ったカルチャー
――では、プレイやパフォーマンスの面で自分に影響を与えたものがあるとしたら? 河西ゆりか バンドのCHAIかな。CHAIは変化を恐れない人たち。何度も観ているのに、次に見たときには全然違う音楽だと思わせる。その変化がすごいと思います。なんでもやってみよう、みたいなスタンスはCHAIから教わりました。 塩塚モエカ 元々は『リトル・マーメイド』のアリエルが好きで、ああいう風に歌いたいなって思っていました。でも、今は歌が上手い人にも憧れるし、個性のある声にも惹かれる。これまで見て、聴いてきた色々なものをぐちゃぐちゃに混ぜてやっている気がします。 フクダヒロア ちょっと斜に構えた感じとか、みんながやらないようなことをやってやろうっていう今の僕の気持ちは、サブカルチャーからの影響が大きいと思います。たとえばドラムのセッティングでもシンバルが24(※)だったり、クラッシュ(シンバル)が二重でかかっていたり、ライド(シンバル)が水平になっていたり、そういう独自のプレイを心掛けているんですけど。一筋縄じゃいかないことをやろうという精神は、僕が好きなサブカルチャー作品や作者の言葉からの影響ですね。 (※18~22インチが一般的なサイズと言われている) ――漠然とした言い方ですが、羊文学のライブはロックバンド然とした空気を感じます。 塩塚モエカ どうだろう。でも、ライブでは「パンクだぜ」みたいな気持ちはありますね。いいことを言っている曲もありますけど、「うるせえ!」みたいな感じで日々暮らしています。 ――それはなぜ? 塩塚モエカ おかしいことがいっぱいあると思う。 ――この社会に? 塩塚モエカ 自分が育ってきた環境もあるかもしれない。私はミュージシャンになりたかったけど、通っていたのが進学校だったから、勉強していい大学に行くことが絶対的正義みたいな空気があって。「みんないい老人ホームにでも入りたいのかな?」って思っていました。で、大人になったら大人になったで、「そんな働いてどうするんですか?」って。「もっと自分の時間を持ったらどうですか?」って思うんですけど、私がひとりでサボっても、ただサボっている人になるだけじゃないですか。そういうところにもすごく苛立ちを感じます。