「命を離さないで」――羊文学が最新アルバムで切り開く境地、曲に滲むメッセージ【オリジナルインタビュー】
<飾らないで話せたら いいね/生きてるって感じたいから>「Addiction」 <愛をしてるから祈っているんだ 今も、この先も>「永遠のブルー」 【写真を見る】『呪術廻戦』のエンディングテーマで話題の男女3人組バンド「羊文学」 冒険心のあるオルタナティブロックバンド。清らかな音色と誠実な言葉を投げかけるスリーピース。羊文学の魅力は語り尽くせないほどある。オルタナティブロックやシューゲイザー、インディロックやシンセポップ、ポストロックやドリームポップを吸収して生まれるこのバンドの音楽には、エッジのあるサウンドと美しいメロディが同居している。フクダヒロア(Dr.)のドラムは繊細に楽曲の表情を形作り、河西ゆりか(Ba.)は厚みのあるベースと澄んだコーラスで華を添える。何より塩塚モエカ(Vo.≫.)の歌詞には、この陰鬱な時代にそっと温かみをもたらすようなメッセージ性がある。 羊文学の快進撃については、きっと多くのリスナーが注目していることだろう。作品ごとに自身の音楽を更新してきたこのバンドは、昨年リリースしたアルバム『our hope』で第15回CDショップ大賞の大賞<青>を受賞。今年の夏にはFUJI ROCK FESTIVAL ’23のグリーンステージに立ち、現在放送中のTVアニメ『呪術廻戦』「渋谷事変」のエンディングテーマに抜擢されるなど、まさに話題を呼び続けている最中である。さらには来年4月に横浜アリーナでのワンマンライブが決定するなど、今やシーンでも一際大きな存在感を放つバンドへと成長を遂げている。 12月6日リリースのメジャー3rd アルバム『12 hugs (like butterflies)』は、いわばこの快進撃を証明する作品になるだろう。今回の取材では『with』12月号のインタビューから少しだけ趣向を変えて、これまでの歩みを振り返りながら、新作について語ってもらう。足早ではあるが、羊文学の実像に迫る。
当時も今も変わらぬ「やってやる」という静かな反骨精神
――羊文学はメンバーの脱退や加入を経て、2017年から現在の体制となりました。塩塚さんはオリジナルのメンバーですが、フクダさんと河西さんは羊文学に加入する頃、バンドに対してどんな印象を持っていましたか? フクダヒロア(Dr.) 僕が加入したのは高校3年生の頃ですね。当時は女性のスリーピースで、みんな賢くて音楽にもすごく詳しいという印象でした。最初にスタジオに入って「春」を合わせたんですが、この曲には僕が好んでいるオルタナティブロックやシューゲイザー、ポストロックやマスロックの要素もあったのでおもしろいなって思いました。あと、バンド名に惹かれましたね。「音楽だけではないものを表したい」って塩塚が言っているんですが、本当にその通りだなって思います。 河西ゆりか(Ba.) バンドを第一に考える人たちが集まるのってすごいことだなと思い、感動したのを覚えています。ふたりは心の底から音楽が好きで、ロックの気持ちみたいなものがあり、そこがいいなと思ったんですよ。 ――ロックの気持ちがあったんですね? 塩塚モエカ(Vo.≫.) 覚えてないです(笑)。 河西ゆりか いや、当時も今もあると思うよ。 フクダヒロア あるね。 河西ゆりか 「やってやるぜ」みたいな気持ちが奥底にある。それは変わらず今もそう。ずっと持ってる。そこが一番の魅力だと思います。