「血圧が高いから」と薬を飲むと脳梗塞が50%も増えた! 元気な百寿者ほど血圧が高いという真実
降圧剤で脳に酸素や栄養が滞る状態に
こうした血管の事情を抱えた高齢者が、むりやり薬で血圧を下げてしまうと、脳への酸素や栄養が滞ります。下げた血圧が基準値内になれば、医者は「よかったですね」と言いますが、実質は低血圧の状態になっている可能性があります。 低血圧の代表的な症状には、疲れやすい、だるい、めまい、立ちくらみ、頭痛、耳鳴り、不眠、胃もたれ、吐き気、発汗、動悸、不整脈などさまざまなものがあります。立ち上がったときに起立性低血圧が起こると、ふらついて転倒し、骨折する危険性もあります。 ただ、血圧の薬を飲んで、これらの症状をはっきり自覚する人はあまり多くはないかもしれません。薬によるだるさなどの症状というのは慣れてしまうとあまり感じなくなってしまって、それが年のせいのように思われてしまうからです。そして、薬をやめてはじめて、薬のせいであんなに元気がなかったのだと気づくことがとても多いのです。コロナ禍でマスクをしていても苦しいと感じなかったのに、はずしてみると酸素量が増え呼吸も楽で、こんなに空気がさわやかなんだと感じるのと同じことと思います。 私のように血圧が200近くあり、血管年齢が80歳とか90歳と言われるほど動脈硬化がひどい場合は、血圧を140に下げると如実に体調が悪くなりました。これでは仕事ができないので、薬を減らして170くらいになるようにしています。やはり、血管の壁が厚くなっている場合は、ある程度血圧が高くないと脳に十分な酸素や栄養が届かないというのは事実なのだと自覚しました。
低い血圧で血管が詰まる可能性も
私は、高齢者の患者さんには、血圧が高くても気にしなくていいと言っています。みんな血圧が高いと血管が切れて脳出血になると恐れていますが、今は栄養状態がよくなっているので血管が切れることはめったにありません。1960年には人口10万人当たり脳出血の死亡者は120人を超えていましたが、2020年には25人前後と激減しています。 むしろ血圧を薬で下げるほうが、脳の血流が減り、血管が詰まりやすくなって危険です。ある比較試験では、高血圧の人に降圧剤を飲ませたら、血管が詰まる脳梗塞が50%も増えています。高齢者の血管はある程度動脈硬化が進んでいるので、薬でむりやり血圧を下げると血流がゆるやかすぎて、脳の血管が詰まってしまったのです。 日本高血圧学会の大規模な比較試験では、上の血圧が160以上ある4400人を2グループに分け、一方は140未満まで下げる厳格な治療を行い、もう一方は140~160のゆるめの治療を行いました。その結果、ゆるめの治療群の総死亡数42人に対して、厳格な治療群は54人と、血圧を厳しく下げたほうが死亡する人が多いということがわかりました。