ファッションは多様を受け入れる「うつわ」がある【ファッション×障がい ファッション・フォームズ後編】
それでも、身体に障がいがあると既製品が着づらかったり、合わなかったりするとファッションに対してネガティブになってしまう。私も身体に障がいを持つ者として過去に同じ経験をしているし、ネガティブな気持ちになるのはとても共感できる。毎日介助が必要な人からすると「生活するだけで周りに迷惑をかけている」と日常的に後ろめたい気分になるのだろうと察する。
けれど、お洒落をするときぐらいは身勝手にファッションを楽しむことも必要なのではないだろうか。車椅子に乗っていても「自分らしさ」は勝ち取れるし、それが車椅子ユーザー全体への印象も変えていく。ファッションで自分に自信を持つことが、自分の人生を豊かにし、周りからの見られ方も変わることを「Fashion Forms.」を見て再度認識した。インタビューの最後、山口さんの「ファッションのタネを撒く」というのは、一人でもお洒落をしている車椅子の人がいれば、障がいを持つ人へのイメージが変わり、それが広がると社会で障がいを持つ人が活動しやすくなるという意味でもあると受け取った。
個人的には、ファッションは生活に彩りをつけてくれるものなのだから、着づらいといった少々の弊害があっても、「こだわる」ということが重要だと思う。服を着る行為は毎日なので、着づらい、着せづらいなどが続けば諦めたくなる気持ちも理解できる。それでも既製品が合わなければ着れるようにお直しすればいいし、身体に合うものがなければ作ればいい。世間で流行っているものが合わなければ、わざわざ合わせる必要はなく、着やすくて、着せやすくて、気分が上がるもので外に出ればいい。ファッションはそれぞれの生活に寄り添い柔軟に受け入れてくれるものだ。「Fashion Forms.」は、特に障がいを持つ当事者やそのご家族に「ファッションは生活を豊かにする多様なアプローチがある」と、強く訴えかけてくる。そして、これは障害がない人にも通じるメッセージだと感じた。