危険運転致死傷罪の在り方巡り法務省検討会が報告書案 高速度運転に新類型も法改正道半ば
法務省の危険運転致死傷罪の在り方を議論する検討会で13日、報告書のたたき台が示された。同罪不適用が相次いでいた高速度運転や飲酒運転による事故に数値基準を設ける案が盛り込まれ、見直し論に一定の道筋を付けた。ただ、慎重な声も根強く、本格的な議論は法改正を検討する法制審議会(法相の諮問機関)に持ち越される見込みだ。 ■スピード運転による事故が焦点 検討会での最大の焦点は、スピード運転による事故だった。 危険運転致死傷罪は「進行の制御が困難」な高速度の運転が対象だが、法定速度の倍以上を出した事故でも、現場道路が直線で「制御が困難とはいえない」などとして同罪適用が見送られる事例が相次いでいた。 検討会が着目したのは、高速度だとブレーキやハンドル制御が困難になる自動車の特性だ。 高速度の運転では直線道路をまっすぐに進行できても、迫る車や歩行者を避けるのは困難になる。検討会では「進行の制御」ではなく「回避への対処」が困難になる運転を対象とすれば、悪質な高速度運転を適切に処罰できるとの意見があり、たたき台に類型新設が盛り込まれた。 さらに、最高速度の2倍や1・5倍など、車や歩行者への「対処を放棄している」といえる分かりやすい数値基準を求める意見が大勢を占めた。 ■飲酒の基準導入には反対意見も 飲酒運転については、血中アルコール濃度は性別、年齢などに関係なく運転能力に影響するという専門家の見解を踏まえ、多くの委員が数値基準導入に賛成した。 ただ、飲酒量と酔いの程度については「個人差や心身の状態で違いが出る」とする反対意見もあり、一致した基準は示されなかった。 検討会では、赤信号を「殊更に」無視した場合にのみ危険運転を認める規定も議論されたが、遺族らから「要件が狭すぎる」とする意見が出た一方で、何らかの限定がなければ悪質性が低い運転まで罰する事態になりかねないとの意見もあり、報告書のたたき台は消極的な言及にとどめた。 検討会は報告書を取りまとめて法相に提出する。要件見直しには、法制審などでの議論を経て自動車運転処罰法を改正する必要がある。(宮野佳幸)