【ローズS回顧】トライアルらしい流れでクイーンズウォーク、レガレイラに明暗 両頭、次走は仕上げがカギに
遅れ差しレガレイラの苦悩
いいかえれば、スローペースのタテ長の隊列は、最後尾のレガレイラにとって最悪の展開になった。 前がしっかり末脚を残した状態で物理的に距離が開いてしまえば、いくら速い脚を繰り出しても届かない。もともと春二冠をみても、アイリッシュチャンピオンS3着のシンエンペラーと似た遅れ差しタイプ。反応の速さが求められる日本の競馬において、遅れ差しタイプはよほどタフな流れにならない限り間に合わない。 坂を上がってからの末脚に迫力を感じ、上がり33.1とインパクトを残しはしたものの、着順は4着。結果がついてこないもどかしさをこの先も抱えそうだ。 その要因はなにか。ひとつはゲートだろう。スタートも反応が大事なので、ちょっと反応が悪いレガレイラはどうしても遅れてしまう。そして、レガレイラ自身が前半は速く走らず、後ろをついていけばいいとレースを覚えている可能性もある。 この習慣をいかに矯正していくのか。陣営の手腕にかかっている。秋華賞までの4週間を注視しよう。 勝ったクイーンズウォークの母ウェイヴェルアベニューといえば、グレナディアガーズのイメージが強いが、フランケル産駒の持ち込みとキズナ産駒では適性は違う。 キズナの父ディープインパクトを父に持つ姉アストロフィライトは小倉芝1800mで2勝目をあげた。グレナディアガーズより反応が遅い分、距離の幅はあった。 クイーンズウォークも序盤、1コーナーあたりで行きたがる素振りがあり、ちょっと怪しいところもあったが、やはりグレナディアガーズほどの反応はなく距離は問題ない。秋華賞も初角の入りでスイッチが入らなければ勝負になる。 2着チェレスタは離れた3番手追走で、スローペースのタテ長の展開を味方につけた。コーナー4回の2000m戦で好位から立ち回るのが得意な形であり、今回はその強みを完璧に表現できた。 さて、本番で同じ形をとれるのか。もし、とれるようなら京都内回りでも残る可能性もある。5戦して4着以下なし。クラスが上がっても崩れない堅実さは実力の裏返しだ。 3着セキトバイーストはチューリップ賞2着がポイントだった。同じ急坂があるコースでみせた粘りを今回も上手に引き出した。だが、これで本番は同じ手は使えないかもしれない。今度は今回のようにひとり旅はさせてもらえない。後続を引きつけても、粘れるか。 3歳上の兄マテンロウアレスは3勝クラスの身だが、驚異的な粘り腰で大穴を連発しており、セキトバイーストもその素養はある。 ライタープロフィール 勝木 淳 競馬を主戦場とする文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュースエキスパートを務める。『キタサンブラック伝説 王道を駆け抜けたみんなの愛馬』(星海社新書)に寄稿。
勝木淳