地震から1日も休まず... “復興スーパー”支える家族 見えぬ先行き…進学を諦めた孫【NNNドキュメント】
■傷んだ冷蔵庫の中身 「1000万円以上は…」
スーパーの3代目・本谷一知さん(46)は、震災後、妻と2人の子どもたちを大阪の妻の実家に避難させ、自身は店の立て直しに奔走してきました。 生ものを入れて保管していた冷蔵庫の中には、年末の予約で残ったアイスが入っていましたが、電気が止まったことで、あったものはすべて傷んでしまいました。 3代目の本谷一知さん 「(アイスは)全部溶けてると思う。全部廃棄。評判良かったんですけどね」 「総額で言うと(全部で)1000 万円以上の在庫は眠っていたんですよ」
■この地震が教えてくれたのは…
地震から1か月半が過ぎても厳しい状況は続いていました。ただ、そのなかでも店は開け続けました。 2代目の本谷一郎さん 「今までこうやって育ててもらって、店舗も持ってこられたのは、親父たちの頃から、ずっとこの周りの人に育てられたから」 「だから自分がこうやって育ったのも、この周りの人たちのおかげだと思っている。その恩義はもう忘れない」 一郎さんの父・本谷庄治さんが行商から始めた「もとや庄治商店」。食品のほか、カラーテレビなど最新家電をそろえたお店には、多くの人が詰めかけました。 2代目の本谷一郎さん 「楽しい人生だね。こんな人生あるんだね」 「この地震が教えてくれたのは、やっぱり人の輪と家族の輪だね。それは感じる」
■家族の願いは「必要とされる限り、開け続けたい」
3代目・本谷一知さんの二男・悠樹さんは、校舎が被災し、母校で門出の日を迎えられませんでした。野球部で白球を追いかけた3年間。春からは、岐阜県の大学に進学する予定でしたが、経済的な負担を考え、大学への進学を諦めました。 悠樹さんには最近、新たな夢ができました。 本谷悠樹さん 「消防士の勉強する間、(避難先の)大阪を出ようかなと思って」 本谷理知子さん 「がんばれ。社会に出てからが一番大事」 2代目・本谷一郎さん 「お前、なるべく早く帰って来いや」 復興までの長い道のり。地域に必要とされる限り、町に一軒しかないスーパーをこれからも開け続けたい。それが、家族の願いです。
【編集後記】深夜バイトで生活費を工面し 追いかける消防士の夢
日々、震災関連のニュースを放送していた中、希望のある作品を制作したいと思ったのが、取材を始めたきっかけです。厳しい状況ながらも地元を大切に思い、ユーモアあふれる一郎さんの姿に、私自身も元気をもらう機会が多くありました。 大学進学を諦めた一郎さんの二男・悠樹さんは5月、岐阜県内の牛丼チェーンの深夜アルバイトで生活費を工面し、消防士を目指しています。 再建に向けて、少しずつ前に進む本谷さん一家を、今後も見つめ続けたいと思っています。 (テレビ金沢・住田鉄平ディレクター)