小島慶子「気づけば息子2人が成人に!子育ても人生も行き当たりばったり」
子どもを持つと、以前のように仕事に時間を割くことができなくなります。同僚に遅れをとってしまう、後輩に抜かれてしまうと焦り、子育てでも周りの親子が気になって、ついつい比べてしまうもの。子どもはしょっちゅう熱を出すし、それで仕事のチャンスを逃して、なんで?!と泣きたくなることも。 けど、そんな予想外の事態に対処する毎日で、鍛えられている力もありますよね。マルチタスクをこなす、急な予定変更に対応する、なすべきことの優先順位を瞬時に入れ替える、なかなか話の通じない人を説得する(幼児はその最たるもの)、目標の6割できればよしとして次に進む、などなど。これってビジネス書を何十冊も読んでオンライン研修を100時間受けるのと同じかそれ以上に、鍛えられる経験ではないかしら。 最近の研究では、男女にかかわらず、人は赤ん坊のケアをすると脳の同じ領域が活性化することがわかっているそうです。 自分の子でなくても、子育て経験がなくても同じなのだとか。その時に活性化する領域は2箇所あって、子どもを本能的に守ろうとする比較的古い脳の領域と、子どもにとってどのような対処が望ましいかを考える大脳新皮質の領域とが同時に活性化するのだとか。それを親性(おやせい)脳ネットワークとか、親性脳と呼ぶそうです。これまで母性や父性といわれていたものは、実はヒトに基本的に備わっている「親性」という脳の働きなのだという指摘は、なかなか興味深いです。 この親性脳ネットワークは、いわゆる社会脳といわれる領域とも重なっているそうです。社会的な生き物として生きるために使っている脳みその領域が、子どもを育てる時に活性化する領域でもあると。そう考えると、子育て経験が仕事や人間関係の構築に役に立っているという実感にも納得がいきます。 後進の指導にも役立ちそうです。自分が子どもを持つか否かにかかわらず、赤ん坊や幼児のケアをする機会をもつこと。「子育てを他人事にしない社会」は、誰にとっても暮らしやすい社会でもあるはずです。