衆院選で語られない「東京一極集中」の罪と罰…「東京23区で子育ては超富裕層しかできません!」と嘆く、エリート会社員「絶望の真実」
「アベノミクス」の副作用、そのヤバすぎる実態
金融緩和の影響は凄まじかった。23区内でも超都心とされるところでは、少なくとも昨年までは、マンション購入の4割程度が投資目的だといわれている。 もともと海外の不動産投資家は、シンガポールや香港と比べて割安とされる東京のマンションを買っていたのだが、近年の大幅な円安進行によってさらに割安になったマンションを買い漁るようになった。企業の創業者や経営者といった超富裕層も、超都心のマンションを投資のため積極的に買っていたようだ。 もちろん、実需の買いも旺盛だった。低金利の長期化を背景に、パワーカップルと呼ばれる高所得世帯の購入もマンション価格の高騰を支えていた。 住宅価格が年収の何倍かを示す「年収倍率」は、業界の目安として世帯年収で6倍程度とされる。総務省の2022年の家計調査によれば、東京23区の世帯年収の中央値は1012万円だったので、23区の新築分譲マンション価格は世帯年収の10倍を超える水準になった。異常な水準にあるといえるだろう。 新築の価格が高騰すれば、それに連動して中古の価格も高騰する。23区内では中古マンションでも1億円を超える物件が珍しくなくなった。その結果、新築や中古のマンション購入をあきらめた世帯が賃貸マンションに流れ、賃貸の価格も押し上げるという構図になっているのだ。 23区の2024年の新築分譲マンションの価格(1~8月の平均)は1億1206万円と、日銀が大規模緩和から利上げに転じたこともあり、2023年の価格より2.4%低下している。 その一方で、新築マンションの価格高騰にサヤ寄せするように、2024年の中古マンションの価格や賃貸マンションの賃料はじりじりと上昇傾向を維持している。 「子どもを育てる費用が高騰する住居費に奪われている可能性が高い」という指摘は多い。マンションの広さも新しくなればなるほど縮小傾向にあり、「23区で子どもを2人3人育てるのは不可能だ」という声も多い。金融緩和の副作用が子育て世代を直撃しているのは間違いない。 このように東京で子育てをするのは、多くのひとにとって難しくなっている。 その教育費についても青天井の上昇を繰りかえしている。 その事情については後編記事『もう日本に勝ち組はいない…!教育費がどんどん高くなる東京の「子育ての真相」と衆院選で語られない「東京一極集中」、その危うすぎる罠』でじっくりとお伝えしていこう。
中原 圭介(経済アナリスト)