ブルージェイズからアストロズに電撃移籍!菊池雄星「天性の柔軟性がなせるヒップファースト投法」
圧巻のピッチングだった。 ブルージェイズから電撃移籍したアストロズでの初登板となった、8月3日(日本時間)のレイズ戦。菊池雄星(33)は5回2/3を投げ3安打2失点と白星こそつかなかったものの、いきなり球団タイ記録となる8者連続三振をマークする快投をみせたのだ。試合後、菊池はこう語り安堵(あんど)の表情を見せた。 【徹底解説!】アストロズ・菊池雄星の「ヒップファースト投法」連続写真 「スタートの1発目が大事だと思っていました。試合を作ることができ、チームも勝って本当にホッとしている」 菊池はメジャー6年目を迎え、ローテーションを守り続けている。一方で投球が安定しているとは言い難(がた)い。今季も8月7日現在、4勝9敗で防御率4.67と黒星が先行しているのだ。動作解析の専門家で、筑波大学・体育専門学群教授の川村卓(たかし)氏が菊池のフォームの長所と課題を解説する。 「最大の特長は天性の柔軟性です。可動域が広く、身体が柔らかいため肩から胸にかけ大きく動かせ、力強いスピードボールが投げられます。一方で、身体が動きやすいがゆえに上体が突っ込み制球が難しくなるケースもあります」 菊池の連続写真を見ながら、川村氏の解説を聞こう。 「①の始動では、左脚と腕の使い方が独特です。普通は脚の動きに合わせ腕を上げるのですが、菊池は腕を下げています。脚と腕の上下運動で、軸足にしっかり体重を乗せる意識ができています」 ②では菊池のもう一つの特長、ヒップファーストがわかるという。 「お尻から身体を打者方向へ倒しています。上半身から下半身にかけ、ひねられた状態になり力を溜(た)められるんです。西武時代は身体をもっと低く沈み込ませていましたが、硬いメジャーのマウンドに適応し重心はやや高い位置にあります」 ③は、菊池の投法を象徴している。 「ボールを持った左手が頭の後方にあり、両肩から胸にかけ上半身が横に大きく開いています。類稀(たぐいまれ)な柔軟性がなければできない身体の動かし方です。縦軸でも胸がしっかり張っている。これだけ可動域が広ければ、最速160㎞/h近い速球が投げられるのも当然でしょう」 柔軟性は④にも表れている。 「左腕がムチのようにしなり、ボールにさらに勢いをつけています。体重もしっかり右脚に乗り、マウンドの硬さを利用しスムーズな動きができています」 課題は⑤のフィニッシュだ。 「上体がやや打者方向へ突っ込み気味で、頭が前方にあります。これでは視線がブレてボールを制御しづらい。ガマンして身体を後方に残すべきでしょう。菊池の生命線は、高目への力強い速球と低目への変化球の投げ分けです。しかし速球が制球難から決まらず、変化球を狙われ痛打される場面が目立ちます。上体の突っ込みを直すことが、安定した投球への大きな課題。克服できれば、毎年コンスタントに2ケタ勝利をあげられるはずです」 新天地アストロズで、菊池は生まれ変わった姿を見せられるだろうか。 『FRIDAY』2024年8月23・30日合併号より
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