遠藤憲一と田中美里“禁断のメロドラマ”「それぞれの断崖」まさかの展開へ
遠藤憲一の主演ドラマ「それぞれの断崖」(フジテレビ系、土曜23時40分)が中盤に入り、最愛の息子を殺害した同級生の母親との“禁断の恋”の行方が注目を集めている。
シリアスな社会派ミステリー、まさかの展開へ
同作は、遠藤演じるコンピューターメーカーの会社員、志方恭一郎が、息子で中学2年生の恭介(渡邉蒼)を同級生の八巻満(清水大登)に殺されるというショッキングな事件から始まる愛憎劇。小杉健治氏による少年犯罪を扱った社会派ミステリー小説が原作で、2000年には三浦友和を主演にテレビ東京でドラマ化されている。 24日放送の第4話では、妻・雪子(田中美佐子)と長女・真弓(仁村紗和)、次女・真紀(永瀬莉子)との日常が崩れていく中、あろうことか息子を殺害した八巻の母、はつみ(田中美里)と恋に落ちてしまうという衝撃的な展開を迎えた。遺族、そして加害者家族をはじめ、さまざまな立場における愛憎と葛藤を描くシリアスな物語で、それぞれが最後は着地点を見つけて再生していくというが、目下の注目ポイントは遠藤と田中美里が繰り広げる“禁断のメロドラマ”だ。
妻役・田中美佐子の鬼気迫る演技も注目
遠藤は22歳でドラマデビューし、刑事ドラマはじめ時代劇などで下積み的な出演を積み重ね、コワモテな風貌からとくに90年代以降はVシネマをはじめ悪役として知られるようになった。しかしご存知の通り、近年ではコミカルな役から人間味あふれる役まで幅広く魅せることのできる役者としてさまざまな作品で活躍している。 そんなしっかりした下地のある遠藤だけに、今作でみせる恋愛モノの演技も秀逸だ。制作発表の際には「コンプライアンスが厳しいこの時代に真逆のヤバい作品ができあがりました。58歳になって、こういう、恋愛を本気でやる役がくるとは思ってもいなかった」と、やや照れくさそうに話していたが、最愛の息子を失った遠藤演じる志方と、最愛の息子に拒絶された田中美里演じるはつみの、互いの喪失感と孤独がやるせなく絡み合い、許されない恋に落ちていく様が、ふたりの繊細な演技によって心のひだに触れてくる。 しかし息子を失って悲しみの底にいる妻・雪子のことを考えれば、ともにこの苦しみを乗り越えていかなければならない夫が、まさか加害者の母と不倫関係に陥るとは、二度も奈落の底に突き落とされるような耐え難い苦痛だろう。絶望を超えた絶望へと追いやられる雪子を演じる田中美佐子の鬼気迫る演技も、今後の大きな見どころとなりそうだ。普通に考えて、この展開は“あり得ない”と腹を立てる人も少なくないはずで、それを演じるには俳優としても相応の覚悟がいるに違いない。遠藤と田中美里の芝居からは、そんな役者としての覚悟さえ感じる。 (文・志和浩司)