電話だけの相談にご用心 借金などの債務整理、面談なしで多額費用請求
借金などの債務整理の相談について、インターネットで大規模に広告を掲載するなどしている弁護士事務所の一部で、不適切な対応が全国的に問題となっている。県内でも、本来は必要な面談をせずに相談を受け、多額の費用を請求するケースも確認されている。こうした対応を問題視している弁護士有志は「法律専門家の立場を利用した悪質な行為だ」とし、注意喚起している。 有志の弁護士らが、多重債務者の救済に取り組むNPO法人「山形さくらんぼの会」によると、日本弁護士連合会(日弁連)は、債務整理の対応について、相談者と面談することを義務付けている。日本司法書士会連合会も司法書士が応じる場合、面談すべきだとしている。 「電話のやりとりのみで債務整理に誘導する例が多い」。山形さくらんぼの会理事長で、山形県弁護士会に所属する外塚功弁護士は指摘する。十分相談にも乗らず、消費者金融などの債権者と返済について交渉をしていないのに、「着手金」などとして弁護士費用を請求するケースもあるという。県内の事例の一つはこうだ。多重債務者の男性は18社に約1千万円の借金があった。ネット広告などで宣伝している弁護士事務所と任意整理の契約を結んだ。「1回当たりの返済額を減らしてほしい」というのが依頼内容だった。だが相談した弁護士事務所は債権者と交渉せず、算定根拠も示されないまま弁護士費用として145万円を請求してきたという。
同会には近年、数十件ほど相談が寄せられている。外塚弁護士は「それでも氷山の一角。もっと被害者はいるはずだ」と指摘する。不審な点があっても「債務整理はこういうもの」と思っている人も多い。電話だけの弁護士事務所への相談では、電話口の相手が弁護士ではなく、事務員であるケースも少なくない。外塚弁護士は「スマートフォンで広告を見て、幅広い年代の債務者が被害に遭っている。心当たりがあればぜひ相談してほしい」と呼びかけている。 「山形さくらんぼの会」が12月7日無料相談会 NPO法人「山形さくらんぼの会」(理事長・外塚功弁護士)はインターネット上の大量広告で不適切な債務整理に誘導し、二次被害に遭った人を対象に、来月7日午前10時から、山形市中央公民館で無料相談会を初めて開く。 同会は22日、県庁で記者会見を開き、外塚理事長は「被害者は増えており、事態に一刻の猶予もない」と危機感を示し、五十嵐幸弘弁護士は「弁護士などに払った不適切な金額は、全額回収する」と語った。無料相談会は午後2時まで。予約不要。電話でも受け付ける。023(633)9353。
【債務整理】 債権者と利息や分割支払いの期間について直接交渉し、合意に基づいて返済する「任意整理」が最も多い。生活に必要な最低限の財産以外を債権者に分配し、債務を免除する「自己破産」などもある。それぞれメリット・デメリットがある。