新NISA初心者の3割がパニック売り、24年8月の株暴落影響で
2024年8月5日、日経平均株価は前週末比4451円(12.4%)安の3万1458円と急落。過去最大の下げ幅を記録した。この歴史的な暴落に、新NISAを利用する投資家たちはどのような反応をしたのか。投資専門サイト「テクニカルブック」は、2024年8月上旬の日本株暴落時における新NISA利用者の投資行動を調査する目的で、20~69歳の男女446名を対象にアンケートを行った。その結果、投資経験によって暴落時の判断や行動に違いがあることが明らかになった。 調査機関 :投資専門サイト『テクニカルブック』 調査方法 :インターネット調査(株式会社ジャストシステム「Fastask」) 対象エリア:日本全国 対象者 :新NISAを利用したことがある20~69歳の男女 調査期間 :2024年10月21日~11月1日 有効回答 :446名 新NISA利用者の6割は投資経験ビギナー まず、新NISAを始める以前の投資経験について質問した結果、もっとも多かったのは「1~3年未満」が29.8%、次いで「10年以上の経験」が15.7%だった。全体では「投資経験3年未満の利用者」つまり初心者層が過半数をしめた。そのうち「新NISAで投資デビューをした」という人は13.2%で、日本の投資市場に新たな個人投資家が増えていることを示した。 また、新NISA投資枠の利用率は「成長投資枠」が73.3%、「つみたて投資枠」が65.7%で、成長投枠を利用している人の方が若干多いという結果になった。 暴落時、投資家初心者はパニック売り傾向に 2024年8月の大暴落時、新NISAの成長投資枠利用者の行動を見ると「特に何もしなかった」が43.7%ともっとも多かったが、「保有銘柄・商品の全部または大部分を売却した」人は13.5%、「一部を売却した」人は26.9%と、全体の4割の投資家が消極的行動(売却)をとったことがわかった。注目すべきは、投資経験が浅い層ほど消極的行動が多い点だ。投資経験1~3年未満の層では約6割が消極的行動を行った一方で、10年以上の経験者の消極的行動は16.7%にとどまった。また、「新NISAが初めての投資」という層では30.0%が保有銘柄の大部分を売却。経験不足のため損益や残高の数字を見て冷静な判断ができなくなり、「パニック売り」という極端な行動へとつながった可能性がある。 一方、「新たにまたは追加で購入した」という積極的行動を取った人は、投資経験10年以上の層で30.0%と最多。積極的行動は、基本的に投資経験が長くなるほど高いことが明らかになった。 つみたて投資枠では冷静な判断が多数派 つみたて投資枠では、8月の暴落時「現状維持」を選択した人が61.8%と過半数をしめた。成長投資枠と比べ、暴落時にも方針を変えない投資家が多かったようだ。ただし、つみたて投資枠でも投資経験が浅い層は感覚的な判断が多く見られ、経験1年未満の層では22.2%が感覚や直感に頼って判断したようだ。経験が3年以上になると、「あらかじめ決めていた投資ルールに従った」人や、市場動向や経済指標の分析をもとに判断する割合が増加。成長枠に比べて冷静な行動がやや多い傾向にあった。 7割が今後の株価上昇を期待 新NISA利用者に「1年後の株価について」予想してもらう項目では、「現在と同じような水準」と予想した41.7%と最多。また、10年後では45.7%、30年後は約46.0%の人が株価上昇を予想し、時間軸が長くなるほど上昇への期待が高まる傾向が見られた。この期待感は、新NISAの今後の利用意向にも表れており、成長投資枠・つみたて投資枠ともに約7割の人が「今後も利用したい」と回答した。歴史的な日本株暴落を経験しても「投資をやめよう」と考える人が少ないことは注目に値する。 この調査から見えるのは、投資経験がトレード判断の質に直結するということだ。2024年からスタートした新NISAに伴い、来年以降も個人投資家層はさらに拡大すると思われる。ただ、相場に振り回されて市場から退場してしまっては投資の意味がない。売りは売りを引き起こす。個人投資家がさまざまな相場を経験し冷静な判断と行動を取ることで、市場全体の安定性が増していき、個人投資家の懐も少しずつ温かくなるのではないか。
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