世界のホームラン王・王貞治氏、大谷翔平の打撃を徹底解説「だから飛距離を出すことが可能なんだ」
2023年、日本人として初めてアメリカ・メジャーリーグ(MLB)ホームラン王に輝いた大谷翔平。 歴史的偉業を成し遂げた裏には、どんな要因があったのか。 テレビ朝日のスポーツ番組『GET SPORTS』では、世界のホームラン王・王貞治氏と二刀流生みの親・栗山英樹氏が「大谷翔平の本塁打」をテーマに対談した。 テレ朝POSTでは、対談の模様を前後編で特集する(前後編の前編)。
◆世界の王が語る「ホームランを打つために必要なこと」
栗山:「僕も子どもの頃、王選手のホームランに憧れてずっと野球をやっていました。バッターの憧れはホームランにあると思います。大谷選手がメジャーでホームラン王を獲ったことについて、王会長はどう感じられましたか?」 王:「あの結果には、アメリカ人も『大谷には参った』と感じたんじゃないでしょうか。ホームランもスタンドのギリギリじゃなくて、ドーンと(奥まで)いっちゃうでしょ。アメリカ人が一番待っていたヒーローが、日本人だったということですよね。 彼が日本でやっていたときはまだ細かったけれど、ウエイトトレーニングをしっかりやって鍛えました。やっぱりメジャーでやる以上は体で負けたらダメですから。ましてやメジャーはスケジュールがハードでしょう。時差もありますし。 でも、そういったことを彼からは感じないです。ピッチャーもやる、バッターもやる。全然違和感がないです。当然のごとくやっている。本当に彼に会ったら色々なことを聞いてみたい。メジャーへ行った人でなければわからないことが絶対にありますから」
栗山:「ホームランを打つために必要な要素はいくつかあると思います。王会長は選手にいろいろ教えてくださいましたが、どんなことが大事だと思われますか?」 王:「やっぱりバットを振れる体ですよね。ただ、実際にインパクトのところに一番力が出るようなスイングを常に練習すること(が大切)。大谷選手の写真を見ると、必ず手が先へいって頭は残っています。これができるようでできないんです。頭がちょっと前へいくだけで、当たるところがずいぶん変わるんですよ。大谷選手は構えからスイングまで頭の位置が変わらない。これが一番大きいと思います。 彼は高校時代から自然にそれができていたと思います。やっぱりこれが大事なんだと打っていくうちにわかったから、余計にそこを大事にしているんでしょうね。高めの速い球にも負けないし、低めの球でも本当にうまくレフトへもホームランを打つ。あれじゃアメリカの選手たちは頭を痛めるはずでしょう」 栗山:「そうですね。やっぱり人間って飛ばしたいじゃないですか。王会長が言った通り、飛ばしたくなると力が入るから、どうしても(頭も)一緒に(前へ)いってしまったりします。それは、練習でその形を作っていくんですか?」 王:「やっぱり意識はありますよね。なぜかと言うと、(前へ)いけばいくほど力感はあるけどバットの先は走らないんです。反対に、自分が駒のようにシーンと静かに止まっているほど回転はよくなります。ステップしてバットを振りにいくとき、とにかくこの1本の軸はぶれちゃダメなんです。彼は頭が残っているから、そのぶん手が振れている。手が振れて(バットの)ヘッドが走る。だから飛距離を出すことが可能なんだと思います」 頭の位置が動かないことで、身体の軸が安定しブレない。これこそが大谷特有の異次元の飛距離を生み、ホームラン量産へと繋がっている要因だという。