【超解説】世界経済の急所、紅海を牛耳る「フーシ派」とは何者か?
11年の『アラブの春』ではイエメンのサレハ政権が倒れ、その後に起きたイエメン内戦は、南部のスンニ派勢力を支援するサウジアラビアと、それに対抗するフーシ派を支援するシーア派の領袖(りょうしゅう)イランの代理戦争のような展開になりました。 14年にフーシ派は首都サヌアをはじめ人口が密集している北西部を制圧し、現在まで二重政府のような内戦状態が続いています」 ただ、ごく最近はサウジとフーシ派の戦いは小康状態にあった。昨年3月、中国の仲介で、フーシ派を支援しているイランとサウジの国交正常化が合意に至ったからだ。前出の河合氏が言う。 「スンニ派の王族による独裁国家のサウジにとって、シーア派住民が多く、しかも中東では珍しい共和制国家であるイエメンがやっかいな存在であることに変わりはありません。 ただフーシ派の立場からすると、イランが手打ちをした後でサウジとことを起こせば、これまで散々世話になったイランの顔を潰してしまう。しばらくの間はサウジから手を出さない限り、フーシ側からの攻撃もないと思います」(前出・河合氏) そんな状況下でイスラエルとハマスの戦争が始まり、イスラム世界には強烈な反イスラエル・反米感情が広がった。 フーシ派は「アッラーは最も偉大なり。アメリカに死を。イスラエルに死を。ユダヤ教徒に呪いを。イスラムに勝利を」というスローガンを掲げ、ミサイルやドローンでイスラエルや米軍艦への攻撃、さらには紅海を航行する欧米・イスラエル関連の民間船への攻撃を続けている。 ■船舶攻撃の裏にはイラン、ヒズボラの支援 世界各地でドローンの取材を続けるフォトジャーナリストの柿谷哲也氏は、フーシ派による船舶攻撃の手段を次のように分析する。 「サウジの遠距離目標に対する攻撃を長年続けてきたフーシ派は、ミサイルやドローンの扱いに長(た)けている。 長距離攻撃ができる高性能なミサイルやドローンは多くがイラン製ですが、一部は自分たちでも生産しています。イランからの海上輸送ルートは米海軍が目を光らせているので、イラン軍や革命防衛隊が関わる形で、輸送機でイエメンに空輸しているでしょう。 インド洋でイランのドローン攻撃を受けた日本企業所有のタンカーの写真を見ると、爆発の威力は相当大きく、軍艦ならば損害は軽微でも、民間の商船に対する攻撃としては十分。