<前代未聞の憲法停止と議会解散>クウェートで民主主義の危機が起きる独特の事情
激化する権力闘争
このようにGCCの中では一番「民主的」な議会制度を有するクウェートだが、このクウェートの議会制度は、クウェート人が民主主義を望んだ結果ではなく、クウェートを支配するサバーハ家と有力豪商との緊張関係で発展した。有力豪族だったサバーハ家はオスマン帝国下で首長としてクウェートを支配するが、豪商達からすればサバーハ家は元々同格に過ぎず、豪商達は首長を牽制する手段として議会を利用して来たという経緯がある。この社説は議会が経済改革を妨害していると指摘しているが、経済改革で既得権益が犯される豪商が経済改革に反対するのは当然であろう。 さらにアラブ・イスラム世界の変化に伴い、恐らく議会の性格も変質して、豪商の利益を代表するという性格に加えてイスラム原理主義者や民主運動家等も議員となり、首長家にとりますます厄介な存在となっているのであろう。 なお、サバーハ首長家はベドウィンの伝統に従って兄弟間で首長位を継承しているが、サウジアラビアと同じく首長の高齢化が著しく、現首長は83歳だ。サウジアラビアでは70年以上続く兄弟間継承からようやくサルマン国王の息子のムハンマド皇太子が後を継ぐのが確実視されているが、そこに至るまでに激しい権力闘争があった。さらにクウェートの首長家にはジャービル家とサーリム家という2大ファミリーがいて、首長位継承はより複雑な問題となっている。
岡崎研究所