セレッソ大阪が起こしている異変のなぜ?
2012シーズン以降の5年間で指揮を執った監督は実に7人。国籍はブラジル、セルビア、イタリア、そして日本と多岐にわたる。文化や風習が変われば、標榜するサッカーのスタイルも変わる。 迎えた今シーズン。フロントは元韓国代表MFでクラブOBでもある、尹晶煥監督に抜本的な強化を含めて指揮を託した。キャンプで3部練習を厭わないスパルタ指導で、サガン鳥栖をハードワーク集団へ変貌させた手法を、44歳の青年監督はそのままセレッソに導入した。 自陣でブロックを作り、組織で連動してボールを奪い、素早く攻撃に転じる。開幕直後はエンジンがかからなかったが、第4節以降は粘り強い戦いを披露。8日は敵地で王者・鹿島アントラーズを撃破し、試合終了間際に2‐2の同点とされたものの、16日のガンバ大阪との「大阪ダービー」でも熱戦を展開。シュート数では14対6と、宿敵をはるかに上回っていた。 柿谷、山口、清武とヨーロッパでの挑戦を道半ばで断念し、古巣へ復帰した選択には批判も少なくなかった。玉田社長も「しょせんセレッソは仲良しグループで甘い、という指摘をよく聞きます」と認めながら、決してネガティブには受け止めていない。 「仲がいいのは事実ですけど、イコール、甘やかされているということではないと思う。チームとして戦うときに、仲のよさがいい意味で出ることもある。何よりも(柿谷)曜一朗や(山口)蛍、そして清武も向こうで大変厳しい経験を積んできたので、それを持ち込んでくれるんじゃないかと」 清武こそ故障禍で3試合の出場にとどまっているが、代役としてトップ下で起用された、本来はボランチの山村和也が2度も決勝ゴールをゲット。2年目のMFソウザ、新加入のDFマテイ・ヨニッチもフィットするなど、チーム内には好循環が生まれつつある。 昨シーズンのJ2を制したコンサドーレは都倉賢、2位の清水エスパルスも鄭大世と、ともに4ゴールをあげて得点ランク3位タイにつけるストライカーが、チームをけん引する形で勝ち点を積み重ねている。 コンサドーレは勝ち点8の15位ながらサンフレッチェ広島とFC東京を破り、フロンターレとも引き分けにもちこんだ。堅守速攻を徹底する粘り強い戦いぶりに、22日に対戦を控えるレッズのDF槙野智章は「乗りに乗っているチーム」と警戒心を強める。 エスパルスは33歳とベテランの域に達した鄭のキャプテンシーのもとで、DF犬飼智也、松原后、MF白崎凌平、FW金子翔太ら才能豊かな20代前半の若手が躍動。勝ち点10をあげて9位につけている。 3年ぶりに1ステージ制に戻った今シーズン。すでに全勝のチームはなく、大混戦の様相を呈しつつあるなかで、昇格チームの奮闘ぶり、特に過去の不吉なジンクスを覆す勢いを見せているセレッソが、序盤戦を熱く彩っている。 (文責・藤江直人/スポーツライター)