変革を求められる外食産業どう対処するか ── ワン・ダイニング高橋社長に聞く
関西一円に22店舗を展開中のしゃぶしゃぶ食べ放題「きんのぶた」。旨いと評判のチェーン店だが、10月28日に「きんのぶた PREMIUM 心斎橋」がホテル日航大阪地下2階にオープンした。この店舗は、従来の郊外型と違って業態初の都心店で、しかも、株式会社ワン・ダイニングの記念すべき100店舗目だという。オープンにあたり、高橋淳代表取締役社長に話を聞いてみた。
1965年に食肉小売店として豊中市でスタート
ワン・ダイニングは、競争の厳しい外食産業の中で業績を伸ばし、「現在、全店舗黒字で、赤字店舗が1店舗もありません」(高橋社長)という。いったい、他店と何が違うのか。これまで決して順風満帆だったわけではないというが、実際、その経営スタイルは学ぶべき点が多い。 「外食産業は今、変革が求められている。それには2つのポイントがある。外食市場の縮小とコストアップです。価格競争から価値競争の時代へと移り、それにどう対処していくか。私どもの会社はワン・ダイニングですが、『株式会社2時間の幸せ』だと考えています」 同社は1965年に食肉小売店として豊中市でスタートし、2008年に分社化。2000年郊外型焼肉食べ放題レストラン「ワンカルビ」を展開。ところが01年にBSE騒動が起き、既存店の3分の2が赤字に転落した。この時、「肉屋の強みとは何か」を真剣に考え、事業を見直したという。 「当時、店舗には包丁のカット技術を持つ社員はおらず、セントラルキッチンで肉をカットして、それから店舗へ配送というシステムでした。これだと鮮度が落ちる。食肉小売が母体である強みを生かし、新鮮な肉を提供するためにセントラルキッチンを廃止しました。そして社員全員へカット技術指導を行うことにしたのです」(高橋社長)
アルバイトスタッフの成長意欲を高める取り組みも
セントラルキッチンを持たず、肉の鮮度にこだわり、一枚一枚を店内でカットする。さらに、テーブルオーダーバイキングのシステムで、食べ放題の2時間、お客はテーブルに座ったまま料理やドリンクを楽しめる。1人のスタッフの持卓制だけに、人件費率は高めだが、その分、客数を上げることでバランスをとっているという。 06年に現在の主力業態「ワンカルビPLUS+」と、和豚もちぶたしゃぶしゃぶ食べ放題「きんのぶた」を開店し、料理・接客・居心地において店舗価値を高め、今やこの2業態が順調に売り上げを伸ばして推移している。 もっとも、従業員の90%以上、約4500名がアルバイトだ。そんなアルバイトスタッフの成長意欲を高める取り組みも行っている。毎日の業務を通じて気づいたことをメモし、会社で共有する「気付きメモ」の採用だ。日々の気付きを箱にメモで入れると、それに対して社員がフィードバックするというわけだ。 こうした様々な経営努力が認められて、「2013年度日本経営品質賞・大規模部門」を受賞した。これは日本生産性本部が1995年12月に創設した表彰制度で、「卓越した経営の仕組み」を有する企業が表彰される。ワン・ダイニングは外食企業として初の大規模部門での受賞している。 高橋社長は「『都会にふさわしいプレミアムな空間で、プレミアムなしゃぶしゃぶを』をコンセプトに、贅沢でとっておきの『2時間の幸せ』をお届けします。お料理を心ゆくまでお楽しみください」と話している。 (文責/フリーライター・北代靖典)