世界の社債に暗雲、保有か売却か議論再び-米国債とのスプレッド拡大
(ブルームバーグ): 世界の社債相場にとって、ある指標によれば今月は昨年後半以来最悪の月となりそうで、社債と国債の相対的価値に関する議論が再燃している。
ブルームバーグの指数によると、過去3年間で最小付近だった社債スプレッドは、6月に入ってから約10ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)拡大した。
スプレッドの大幅な拡大は、国債との比較で社債の魅力を低下させるが、ゴールドマン・サックス・グループのロトフィ・カルイ氏らストラテジストは、そうしたことは起きないと見込んでいる。
同行の予想では、米国のハイグレード債スプレッドは2024年末時点で90bp、ジャンク(投機的格付け)債のスプレッドは291bpだ。現行水準はそれぞれ94bpと314bp。
ブラックロックでアジア太平洋ファンダメンタル債を統括し最高投資責任者(CIO)を務めるニーラジ・セス氏(シンガポール在勤)は「マクロ経済は暑過ぎず寒過ぎずの状態にある」と述べる。
通常、これはクレジットにとって「良い環境」で、スプレッドが拡大し得る局面もあるものの、6-9カ月先の見通しでは引き締まる可能性が残っているという。
アバディーンの投資ディレクター、ルーク・ヒックモア氏によれば、投資家はクレジットリスクに対して多くの報酬を得ているわけではない。
だが、金利が高水準で推移した2004-06年と同様、スプレッドがあと数年は現在の水準にとどまる可能性があるため、社債を保有すべきだと主張する余地はあるとみている。
同氏は多くの企業が負債を削減した後で「現時点でファンダメンタルズはかなり良い」と分析し、「レバレッジの解消、かなり安定した経済見通し、高金利のプロフィル」に触れた。
米連邦準備制度が年内に少なくとも1回は利下げに踏み切るとの観測が再び強まり、今月に入って米国債利回りが低下したことが、社債スプレッド拡大の一因となっている。
JPモルガン・チェースのストラテジスト、エリック・ベインスタイン、ナサニエル・ローゼンバウム両氏は今月のリポートで、「歴史的に利回りが低下しているとき、再び安定に至るまでスプレッドが引き締まるのは容易ではない」と指摘。今月先に見られたように、一部の投資家が戻ってくるかどうかは分からないとの立場だ。