めちゃくちゃ怖いのに、前のめりになってしまうぐらい面白い『あのコはだぁれ?』など週末観るならこの3本!
MOVIE WALKER PRESSスタッフが、いま観てほしい映像作品3本を(独断と偏見で)紹介する連載企画「今週の☆☆☆」。今週は、いないはずの少女が引き起こす恐怖を描く学園ホラー、グルーとミニオンたちの活躍を描く「怪盗グルー」最新作、月面着陸にまつわる“ある噂“を基にしたドラマの、ドキドキする3本。 【写真を見る】夏休みの補習授業を受ける生徒たちに“あのコ“が襲いかかる『あのコはだぁれ?』 ■前作のDNAを受け継ぐかなりヤバい学園ホラー…『あのコはだぁれ?』(公開中) Jホラーの鬼才、清水崇監督の最新作は、前作『ミンナのウタ』(23)のDNAを受け継ぐかなりヤバい学園ホラーだ。「呪怨」シリーズでは“家”を、『犬鳴村』(20)をはじめとした“恐怖の村”シリーズでは“村”を、『忌怪島/きかいじま』(23)では“島”を舞台に、真新しい恐怖で観客を震撼させてきた清水監督。GENERATIONSのメンバーが本人役で出演した『ミンナのウタ』も呪われた少女と向き合う最終決戦の場は“家”だったが、本作がそんな過去作と決定的に違うのは、悪の元凶=“あのコ”が向こうから実体を持って学校に攻めてくるところだろう。 しかも“あのコ”は、複数のクラスの知らない生徒が席をともにすることになる、夏休みの補習授業の教室にこっそり紛れ込む抜け目のなさ。こちらから呪いの境界のあちら側に足を踏み入れたり、呪われたカセットテープをわざわざ聴いたりしなくても、自分の選んだターゲットに奇妙な鼻歌で呪いをかけて、自らのおぞましい“コレクション”の数を確実に増やしていくのだから恐ろしい。その執念もとんでもなくて、“あのコ”は学校だけではなく、通学路や駅前のロータリー、子どもたちが下校時に立ち寄るゲームセンターにだって自由に暗躍し、狙った獲物を確実にモノにしていくのだ。それでいて、過去のイジメや虐待などの怨みで呪いをかけてくるこれまでの悪霊たちとは違い、“あのコ”は本人にとっては希望にあふれた、歪んだ欲望を満たすために暴走しているからたちが悪い。その行動心理はまったく理解できない。 いったい“あのコ”とは誰なのか?その目的は?そんなに簡単には分からせてくれない不可解なシチュエーションを設定し、多彩なホラー表現で次々に畳みかけてくる本作は、それだけでめちゃくちゃ怖いのに、同時に、えっ、どういうこと?どういうこと?ってどんどん前のめりになってしまうぐらい面白いから困ったものだ。ヒロインを演じた渋谷凪咲を始め、早瀬憩、山時聡真、荒木飛羽ら次世代俳優たちが見せる恐怖に歪んだ顔やその場の空気を引き裂く絶叫も本作でしか見られない生々しさで、恐怖を増幅。それこそ、ここまで濃密で、遊び心にあふれた日本のエンタテインメント映画はなかなかないし、これを「ホラーは苦手だから」という理由で敬遠してしまうのは勿体ない。できることなら、夏休みに友だちとみんなで映画館に行って、ワーキャー叫びながら観るのがいちばん!そうすれば、鑑賞後に必ず「あれってどういうこと?」って隣の友だちと話し合いたくなるし、間違いなく盛り上がる。友だちと別れた後に、“いまの誰だっけ?”ってなるかもしれないけど…。(映画ライター・イソガイマサト) ■いままで描かれなかったグルーの一面も知ることができる…『怪盗グルーのミニオン超変身』(公開中) ついに愛息子グルーJr.が誕生するも、ママは大好きなのにパパのことは大嫌いで、いつもパパを困らせるなど、グルーファミリーの悲喜こもごもが描かれる。ミニオンズがスーパーパワーで“超変身“した、「メガミニオン」のユニークな能力とその使い方も、観ているこちらをドキドキさせてくれる。 今回は、グルーが高校時代を過ごした学校”リセ・パ・ボン”(悪党学園)がカギになるので、いままで描かれなかったグルーの一面も知ることができて、満足な一本。(映画ライター・詩舞澤沙衣) ■純粋な夢とロマンを素直に体感させてくれる…『フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン』(公開中) 人類初の月面着陸をめざすアポロ計画。その壮大さと裏舞台をテンポよく描きつつ、各キャラクターの個性をバランス良くドラマに絡め、非常に観やすい作り。ハリウッドの総合力を感じる快作だ。タイトルはスタンダードジャズの名曲と同じ。それに合わせるかのように、劇中でも飛行シーンが意外なほどロマンティックに演出されたり、心ときめく瞬間が多発する。絶妙な選曲の数々は、観ているわれわれを1969年にトリップさせる。時代の空気に浸らせるうえで、音楽がここまで効果的な作品は珍しい。やや大げさに言えば、現代に生きる人たちが忘れかけた、純粋な夢とロマンを素直に体感させてくれる。 キャストではやはりスカーレット・ヨハンソンが信じがたいほどのハマリ役。巧みな会話で相手を乗せるテクニック、似合いすぎる60年代ファッション、そして自分の仕事に思い悩む後半のせつなさ…と、すべて完璧。相手役チャニング・テイタムの“受け”のスタンスも好印象で、他のキャラも含めてチームプレーで盛り上がる展開にも胸アツ!(映画ライター・斉藤博昭) 映画を観たいけれど、どの作品を選べばいいかわからない…という人は、ぜひこのレビューを参考にお気に入りの1本を見つけてみて。 構成/サンクレイオ翼