【お墓の放置は絶対NG】無縁墓になると遺骨が取り出せなくなる可能性 墓参り・清掃・メンテナンス…墓に行かずに維持管理するための代行サービスの数々
厚生労働省「衛生行政報告例」によると、2023年度の墓じまいの件数は16万6886件で、10年前(8万8397件)の2倍近くに達した。遠方の墓参りは負担が大きすぎる、実家の墓を継ぐ人がいない──様々な理由で墓じまいを考える人が増えている。 【表】墓に行かずに頼れる代行サービスの数々
もっとも、墓じまいの如何に関わらず、「放置しない」ことは重要だ。墓の放置が続くと継承者の長期不在などの理由により「無縁墓」となってしまう。 総務省が2023年に発表した「墓地行政に関する調査」によると、公営墓地を持つ全国765自治体のうち445自治体、実に58.2%が無縁墓を抱えているという。 放置された墓は簡単に撤去できないため新しい墓を作れず、次の人が入れない。そうした墓は管理料が滞納されているケースが大半で、自治体や寺が無縁墓の維持や撤去にかかる費用を肩代わりすることになる。 終活コンサルタント・吉川美津子氏が指摘する。 「墓の放置は絶対に避けましょう。管理が滞ると区画が荒れ放題になり、墓石が倒れて隣接区画に影響が出るケースもある。また、無縁墓になると最終的に合祀されて他の遺骨と一緒になり、遺骨を取り出せなくなる可能性があります」 そうした事態を避けるための選択肢となるのが、「代行サービス」の利用だ。近年、墓の管理や維持を業者が割安な価格で行なうサービスが広まりつつある。吉川氏が言う。 「コロナ以前は“大切なお墓を人に任せるのは気が引ける”という風潮がありましたが、現在は業者への外注が浸透し、様々なサービスが登場しています。墓じまいには相当の費用がかかるため、“当面は代行サービスでしのぐ”という人が増えました」
ネットで中継する「お参り代行」も
遠方で墓参りに行けない人向けなのが、「墓参り・清掃代行サービス」だ。鹿児島県出水市で墓守サービスを行なう社会福祉法人清流苑「やはず園」本部長の角智宏氏が語る。 「近くのお寺の住職から公営墓地で墓の放置が増えて困っているとの相談を受け、8年ほど前に始めました。墓を維持する方法はないかと考え、1回1時間で墓石の清掃、掃き掃除や水替えなどを行なうサービスをスタートしたのです。料金は1回1万円で年間契約の場合はお彼岸、盆、正月とその合間に合計8回の掃除を行ない、4万3000円です。初めは『墓を他人に掃除させるとは何事だ』という厳しい意見もありましたが、近年は問い合わせが増えています」 やはず園ではインターネットを使ってお墓参りを中継する「お参り代行」も行なっている。墓守サービスの終了後は報告書に清掃箇所の記入と撮影した写真を印刷して依頼人に送付するため、利用者の安心につながっているという。 吉川氏が指摘する。 「代行業者のなかには、『依頼したのに音沙汰がない』といった悪質なケースもあるので、業者は慎重に選びましょう。墓地の近くの石材店などに尋ねれば、信頼できる代行業者を紹介してくれるケースがあります」 信頼性の高さを求めるなら、自治体が運営する代行サービスもある。 「地域のシルバー人材センターのなかには、お墓の清掃作業にシニア作業員を派遣してくれる自治体があります。1区画5000円~など代行業者より安価な場合も多い。 また、ふるさと納税の返礼品としてお墓参り代行を紹介する自治体もあります。返礼品に選ばれている業者は信頼性が高いと言えます」(吉川氏) 墓の老朽化が気になるなら、セコムなどが補修や免震工事を請け負う「墓のメンテナンスサービス」もある。また、遠方の墓の維持や管理、撤去などに関する手続きは専門家である行政書士が代行するサービスも増えている(右ページ図参照)。 「当面は代行サービスを利用しつつ、その間に最終的に墓をどうするか親族同士で決める時間に充てるのもよいでしょう。墓の継承者は必ずしも血縁に限られるわけではないので、地縁なども頼って跡継ぎを見つけることも一つの選択肢です」(吉川氏) 上手に代行サービスを活用して、墓と付き合いたい。 ※週刊ポスト2024年12月6日・13日号