俳優・水上恒司インタビュー「世のため、人のため、そして自分のために」
世のため、人のため=自分のため
本作は、服部金太郎の一代記であると同時に、日本の高度成長を陰で支えてきた職人たちの群像劇でもある。激動の時代に生きながら、時代を先読みし、新しい価値観を作って自身も会社も成長を遂げていくダイナミックさ。そして、2人にはそれぞれ生かすことができる場所がある“という適材適所の概念をいち早く取り入れた会社経営は、現代にも通じる。そんな金太郎の生き様から、水上さん自身、学ぶことも多かったと言う。 「金太郎さんは、自分のことはさておいて、周りの人間のために働ける人物だと感じました。きっとそういう精神がこれまでの日本の基盤になっているのだと思うと、金太郎さんの生き様はすごく勉強になりましたし、台本を通して、改めて自分自身を見つめ直しました。僕はいわゆるZ世代と言われる年齢ですが、世のため、人のためみたいな感覚が希薄な世代だと感じていて……自分自身はどうなのだろうと、問い直しましたね」
1999年生まれの水上さんにとって、義理人情はもはやフィクションの世界かもしれない。だからこそ、何をもって人のためなのか、義理人情を尽くすとはどういうことなのか、ちゃんと理解したいと考える。“Z世代”と括られがちな彼らも、実は今の時代を冷静に俯瞰しているようだ。 「今って、みんな一番大事なのは“自分”ですよね。組織や集団より、個人を大切にしようという風潮が強いし、僕自身も然り。自分なんて、本当に小さいコミュニティの人たちしか大事にできないないと思っているので、金太郎さんがなぜそこまで他者や社会を大事にできたのか、本当の意味では理解できていないと思う。だけど、近所の人に挨拶しただけで怪しまれるような時代に生きていると、それはやっぱりすごく寂しいことだと思うんです。そういうことをぐるぐると考えていると、自分という枠を超えてでも大切だと思える人が周りに一人でもいることが、巡り巡って自分を大切にすること、自分を豊かにしていけることなのかな、と。家族であろうと友達であろうと、仕事仲間であろうと恋人であろうと。自分が大切と思える人たちを大事にするところから始めたいですね」