「光る君へ」道兼役・玉置玲央、思いがけない感情が湧いたシーン 柄本佑の熱意に感謝
道兼と道長の最期の会話が、御簾越しから御簾を越えた会話へ。この変更は玉置にとってかなり大きかったと言い、その時にあふれた思いがけない感情を思い返す。
「もちろん台本の通り御簾越しの会話にした方がいい可能性だってあったんですけど、佑くんは提案を貫いてくれた。道長が道兼の最期に寄り添ってくれたことで、15回で道長に救われたと感じていた思いが一方的なものではなかったと分かった瞬間になったんです。道長ってもともとぶれない人物として描かれてきたと思うんですけど、その道長がブレまくってきた兄に最後まで寄り添ってくれたことに、僕自身もすごく救われたんですよね。佑くんが道長で本当に良かったなって思ったし、今回共演できて良かったなって思ったし、闘ってくれてありがとうって思ったし、いろんな思いが渦巻いたシーンでした。カメラが止まっても、なぜか咳が止まらなくなってしまったんですが、佑くんが“つらいよね、つらいよね”ってずっと背中をさすってくれたのを今でも覚えています。“ああ、これで自分の役割を全うできたな”と思えて幸せでした」
道兼は「俺は極楽浄土に行こうとしているのか? 無様な……こんな悪人が。こんなに笑ったのは生まれて初めてだ」と笑いながら死んでいくが、この時の笑いにはどんな感情が込められていたのか?
「おそらく虚無感とか、自分に対しての嘲笑ではないんでしょうけど、ある種の虚しさもある。道長が死に際に寄り添ってくれることへの喜びもあったかもしれません。それを踏まえての過去に犯してきた罪に対しての申し訳なさとか、いろんなものが入り交じった感情だったなと。あとは哀しくて笑わざるを得ないみたいなこともあったんじゃないかという気がします」
実は、第18回には幻の場面があった。道兼の死後に挿入される映像について、玉置が演出の中泉慧と案を出し合ったと言い、中泉は(儚さの象徴として)蟻が死んだ蝶を運んでいく描写を、玉置は第2回のとあるシーンを挿入する案を出した。本編で用いられることはなかったものの、玉置は中泉とのやりとりを忘れがたいエピソードとして挙げている。