阪神・鳥谷のスタメン外しの是非
阪神の元チーフスコアラーで、現在は岡山商科大野球部の特別コーチを務める三宅博氏も、「連続記録を続けることのチームへの貢献度は、金本監督の現役時代と、鳥谷では大きく違う。中途半端に出場を続けるのではなく、もっと早くハッキリすべきだったのかもしれない。 だが、代役が大和では説得力が弱い。守備力は今の鳥谷よりも上で、実際、この試合にミスもなかったが、攻撃の面では鳥谷にチャンスを与えた方が、チームにプラスの可能性があると考えて決断が遅れたのかもしれない。 鳥谷を外したことでチームが勝てるのかどうかが重要なことで、気になるのは、金本監督の試合後の選手に向けた厳しい発言などで、鳥谷をはじめとしたベテラン、中堅選手の気持ちが離れていっているようにも見えること。鳥谷と直接会話をしていたのならば、なおさらマスコミに向けて発する言葉ではなかっただろう」という厳しい意見を持つ。 だが一方で、金本監督の93試合目の決断を評価する声も。元阪神OBで評論家の池田親興氏は、こんな考え方を明らかにした。 「記録の重みの知る金本監督が配慮して悩みに悩んで出した結論をリスペクトすべきだと思う。最下位のチームで戦力にならないということを鳥谷自身が考えねばならないだろう。実力の世界なのだから仕方のない決断。記録のために野球をやっているわけではない。外すタイミングが遅いという意見もあるらしいが、じゃあ1か月前に鳥谷を外していたら、阪神は今の最下位の位置にいなかったのか。実際、チームに鳥谷のショートのポジションを脅かすような選手はいなかっただろう。 “自らが外してくれと言うべきだった”という意見があるらしいが、その議論はナンセンスである。そんな選手はプロに一人もいない。逆に“スタメンで出してくれ!”と言えば監督は使うのか。そんなことをしていると組織は成り立たない。鳥谷は、なぜ今の不振にあるのかを、この機会を利用して見つめ直して、復調をはかってもらいたい。いずれ記録は止まるものだし、いい機会を得たと思う」 代役出場の大和は、打つ方は4の1で2三振だったが、守備は堅実だった。 そして、背中で引っ張るという鳥谷の性格なのだろう。鳥谷はスタメンを外れても、ベンチで腐ることなく明るく声を出して、キャッチボールの手伝いをするなど、ベンチ入りメンバーとしてできる限りのことはしていた。その姿が一丸ムードを作ったことも否定できない。金本監督も「いい経験だと思う」と、その姿勢を評価していた。これらを総合すると、鳥谷のスタメン外しが、チームにプラス効果を生むことは生んだ。 明日26日のヤクルト戦からの先発出場についても、状態を見ながら決めるという。しばらくは、スタメン落ちが続くのかもしれない。 最後の“聖域”に手をつけた以上、もう「超変革」にタブーは一切、なくなった。だが、ここからチームが盛り返して、来季につなげる土台を固めるために本当に重要なことは、鳥谷をスタメンから外すかどうかの問題ではない。機動力を絡めて、打線をつなぎ、相手が嫌なこと嫌なことをやってくる広島との野球の差を見れば歴然だろう。 広岡達朗氏も、THE PAGEの取材に語っていたが、「野球を学び、根気強く、教えること」なのだ。 (文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)