『アンチヒーロー』ラストシーンは最初から決まっていた キャストから“続編”の声も?
6月16日に最終回を迎えたTBS系日曜劇場『アンチヒーロー』の飯田和孝プロデューサーが取材に応じ、結末までの裏側を明かした。 【写真】最終回 志水(緒形直人)と紗耶(近藤華)の涙の抱擁 まさに大逆転劇となった物語の中でとりわけ印象的だったのは、明墨(長谷川博己)と赤峰(北村匠海)のラストシーンにおける「あなたを無罪にして差し上げます」という言葉。飯田プロデューサーは「最初の企画段階から、赤峰のあのセリフは決まっていました」と打ち明ける。 「最終的に赤峰がアンチヒーローを引き継ぐという意味合いではないですが、正義というものの形がだんだんと彼の中で変わっていく。ドラマを通して、その成長というか、人間の変化を絶対に表したかったんです。なので照明も、第1話の冒頭で明墨に使った明かりをそのまま赤峰にも使用する、という演出をしています」 さらには「あれが北村(匠海)くんのクランクアップのシーンだったと思いますが、見ていてゾクッとしました。照明部も時間をかけてスタンバイしていましたし、(長谷川と北村が初共演した)『鈴木先生』(テレビ東京系)から11年が経って、あのときの教師と生徒が最後にガラス1枚を隔てて会話を交わすというのは、すごく濃いものでした。それに加えて、やっぱり明墨×赤峰にはちょっと特別感がありますよね」と撮影を振り返った。 糸井一家殺人事件の犯人とされていた志水(緒形直人)の冤罪は晴れ、12年ぶりに出所。境界線を越え、娘の紗耶(近藤華)と抱き合う場面にはこみ上げるものがあったが、「あのシーンでは、志水のスーツがブカブカなんです。実は、緒形さん自身も8、9キロ痩せて役に臨んでくださいました」と緒形の徹底した役作りを語る。 さらに「糸井一家殺人事件について、我々の中で真犯人の設定はある」と気になる情報を口にし、「それを出す出さないは、正直議論になっていて。真犯人を出す必要のあるドラマかというと、そこが論点ではないというか。この物語の中心部ではないという判断から、あえて出すことはしませんでした。まだのうのうと生きているんだろうな、という想像はできるので、そこを膨らませていけば面白くもなるだろうし……どうでしょう。ご想像にお任せします(笑)」と話した。 ドラマの題字は桃瀬(吹石一恵)が書いたものであると公表されているが、最後まで劇中に“アンチヒーロー”というその文字が登場することはなかった。これについて飯田プロデューサーは「彼女はおそらく、信念を貫き通すヒーローだったと思うんですよね。でも最後に赤峰くんが言ったように、歪んだ世の中に立ち向かうにはヒーローだけじゃなくて、アンチヒーローも必要なんじゃないかということを、きっと桃瀬さんもどこかでわかっていたんじゃないかと。その思いを文字に載せた、というのが狙いです」と説明する。 また「全話のプロットを作っている段階で一番議論したのは、『緑川(木村佳乃)が仲間であることをいつ明かすか』というところでした」とも。「それがわかると、伊達原(野村萬斎)のもとで緑川はどういればいいのか、さらには視聴者がどう観ればいいのかが難しいなと。それに、このドラマは緑川、桃瀬、明墨という3人から始まっている物語なので、やはりそこを明かすのは最後かなということになりました」とした。 最終回放送前の予告では「全伏線回収」と謳われていたが、「全伏線を回収することが目的というよりは、みなさんにスッキリしてほしいな、ということがあって。その中で、『みなさんが想像しているものを上回りたい』という気持ちで、いつもドラマを作っています」と思いを述べた。 あらためて続編について、「やれるのであれば、やりたいという思いはあります」と飯田プロデューサー。「キャストのみなさんにもいい関係性が出来上がっていたので、最後のほうは『続編があったら』という妄想遊びをしていましたね。たとえば佳乃さんは『私、ラブ路線とかないのかしら』って(笑)。とはいえ、まだ続編の予定はまったくないですし、そこは僕らが議論するところでもないので」と、さらなる展開に含みを持たせた。
nakamura omame