20年ぶり復活の社会人王者VS学生王者の日本選手権。帝京は勝てるのか?
センターの林泰基は、26日の段階で帝京大の特徴を大まかに把握していた。「相手はコンタクトがしたいだろうから、そのコンタクトをさせない、大人げないラグビーをしようかなと思っています」。まず、帝京大を敵陣に封じ込めるとの意味か。 過去の史実、両チームの戦力、組織としての練度を鑑みれば、パナソニックの某選手の言葉がもっとも実相に近いかもしれない。 「勝ってもいないのに偉そうなことは言えない。ただ、力の差というのは徐々に出てくると思います」 しかし、勝負が下馬評通りに進まなかった例は世の中にいくらでもある。帝京大は自分たちの長期間の準備内容に自信を持っており、その意味ではサプライズを起こす最低条件は整えていると言える。 パナソニックが長所とする陣地の取り合いにあっては、「1人ひとりの持っているものを全面に出したアタックを…」と松田。チームには竹山ら、ポジショニングとステップワークなどに長けたランナーが並ぶ。自陣に蹴り込まれたら、まずはランを仕掛ける。もしも目の前の壁が分厚いのなら、逆にその背後にできるであろう空間にキックを蹴る…といった青写真が掲げられそうだ。松田はこうも言う。 「自分たちのラグビーをやるために、いいエリアでプレーしたい。向こうはエリアを取ってくるので、全員で相手のスペースを見て、自分が(蹴る位置などを)判断したいと思っています」 当日は、ただキックが行き来しているようなシーンにあっても、その折のキックの起点へのプレッシャー、弾道を追う選手のランコースは見逃せまい。攻撃を支えるコンタクトプレーには自信を持つ帝京大なだけに、いち早くパナソニックの網目をくぐって敵陣へ侵入したいだろう。 大人たちはたとえ「偶然」であっても負けないよう努めるなか、若者たちは「必然」としての勝利を目指す。結果次第では大会の意義そのものが問われかねない日本選手権だが、両軍が真剣に戦うのは間違いない。 (文責・向風見也/ラグビーライター)