卓球女子シングルス・パリ五輪代表、残る一枠は平野美宇の手に。挑戦者精神が生んだ「角度」と「緩急」の変化
2024年1月22日から28日にかけて開催された全日本卓球選手権大会。注目の女子シングルスは、6回戦で伊藤美誠が姿を消した。これによりパリ五輪の女子シングルスの2つの枠の代表者は、すでにポイントで大きくリードして内定していた早田ひな、そして最後の最後まで争いが続いた残る1つの切符は平野美宇が勝ち取った。悲願の切符を手にした平野美宇は、東京五輪以降、何か吹っ切れたかのように、大会に登場するたびに新しい強さを見せてきた。なぜ、“ハリケーン”は再び強く輝き始めたのか。その要因を見ていこう。 (文=本島修司、写真=松尾/アフロスポーツ)
挑戦者精神が生んだ、メンタル面の強さ
この2年間。平野美宇はとにかくメンタルが強かった。 2016年のリオデジャネイロ五輪ではリザーブメンバーだった平野。チームメイトのボールを拾い、サポートをし、少しでも日本代表選手団の役に立とうとする姿が目を引いた。伊藤美誠が最高のパフォーマンスで団体銅メダルを獲得。日本中が歓喜した。 だが、そこには、平野が試合に出場した選手たちから少し離れた位置を歩いて引き上げていく姿もあった。その姿はとても印象的な光景だった。内心、そこに自分がいない悔しさと、挽回を期すものがあったことは想像に難なくない。 同じことが東京五輪でリザーブメンバーだった早田ひなにも言えるはずだ。そしてこの早田と平野が、パリ五輪に向けてエンジンがかかり、2枚の最終切符をつかむことになる。 早田は東京五輪の直後から、すでに次回のオリンピックでは早田がエースになるのではないかと思わされるほどの片鱗を見せ始めていた。 一方の平野は、ジュニア時代の華々しい登場とは真逆の道を歩んでいた。結果が出ない苦戦の日々が続いた。平野は“変わる”しかなかった。しかし、それはとても良い方向に向かっての変化となった。 その決意は、試合でのメンタル面の強さへと変わった。 2年間の代表争いの日々の最終決戦、2024年全日本選手権。記者会見で平野は「格闘技のつもりで」と言った。今までにない、強い言葉だった。