ロシアとウクライナ、そして世界はどこへ向かうのか エネルギー、平和構築、軍事研究の専門家3人に聞く
ロシアのウクライナ侵攻開始から1年半余り。ウクライナは欧米供与の武器を投入して占領地奪還を急ぐが、ロシアの守りは堅い。停戦が見通せない中、安全保障やエネルギー供給面などで国際社会は不安定化する。戦争の両当事国と世界はどこへ向かうのか。核兵器使用の恐れはないのか。ロシアのエネルギーに詳しい原田大輔氏、平和構築が専門の東大作氏、ロシア軍事を研究する小泉悠氏に話を聞いた。(共同通信) ▽エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)の原田大輔調査課長「原油制裁、ロシア財政に影響」 日米欧などは昨年12月、ウクライナに侵攻したロシアに対し、ロシア産原油取引価格の上限を1バレル=60ドルとする追加制裁を導入した。原田氏は制裁が収入減につながり、戦費調達を含めたロシア財政に影響が出ていると指摘した。(聞き手・吉田尚弘、4月3日取材) ―ロシアと取引を続ける中国やインドが制裁の抜け穴になるとの懸念がある。
「ロシアは割引価格で原油を買い支えている中国やインドに対し、わらにもすがる思いだ。歳入が十分に得られず、安価で売らざるを得ないジレンマに陥っている。中国とインドは安い資源がほしいだけだ。制裁に苦しむロシアを救いたいという友情はない。今後、上限価格を超えた原油を買えば、欧米から制裁を科される事態に発展するだろう。ロシアの戦費につながる行動を続けるか、欧米に従うか、踏み絵を迫られる」 ―ロシア連邦統計局は今年2月、2022年の国内総生産(GDP、速報値)が前年比で2・1%減と発表した。 「ウクライナ侵攻前のGDP見通しは3~5%程度のプラスと見込まれていた。その期待値を加味すれば、前年比5~7%減少したと見ることもできる。侵攻後に高騰した原油価格は昨年6月をピークに下落している。12月に導入された上限価格設定がロシア産原油のリスクを高め、値下げ圧力が強まった」 「欧米の制裁に絡みロシアは昨年8月末、天然ガスを欧州に直接送る海底パイプライン、ノルドストリームでのガス供給を停止した。ノルドストリーム2も昨年9月に爆発によるとみられるガス漏れを起こして稼働しておらず、ロシアはドル箱である欧州市場に天然ガスを流したくても流せない状況に陥っている」