映画007ファンの聖地、「キッシー&ボンドの家」を守れ 老朽化に台風が追い打ち、地元有志がクラファンで補修費募る
1967(昭和42)年公開の映画「007は二度死ぬ」の撮影があった鹿児島県南さつま市坊津町秋目で、ロケに使われた古民家を守ろうと住民が立ち上がった。老朽化が進む家屋を応急処置し7月に団体設立。本格工事に向けクラウドファンディング(CF)も始めた。ところが台風10号の影響で倒壊の危険性がさらに高まった。将来はファンが集う資料館としての再生を目指すが、当面は補修や募金に全力を注ぐ。 【写真】台風の影響などで一部被害の出た古民家=南さつま市坊津町秋目
古民家は、ショーン・コネリーさんが演じる主人公ジェームズ・ボンドと浜美枝さん演じるキッシー鈴木が、敵基地へ乗り込むために仮の結婚生活を送る設定。「キッシー&ボンドの家」と呼ばれ、今も国内外からファンが訪れる。近年は屋根や内部の腐食が進み、外観の見学だけにとどまっていた。 メンバーは屋根にブルーシートをかけ内部を補強。8月29日に県本土へ最接近した台風10号の影響でブルーシートは飛ばされ、元々瓦を外していた屋根がむき出しになった。応急処置のおかげで倒壊には至らなかったが、内部の破損や浸水も一部あり、本格的な補強工事が必要という。 ■目標350万円 住民らが7月5日付で設立したのは「一般社団法人 007 AKIME」。民宿「がんじん荘」を経営する上塘(かみとも)照哉さん(63)を代表理事に、レモン農家でロックバンド「人性補欠」ボーカルの桑原田健史(たけひと)さん(36)、地元の野口弘三さん(76)らが名を連ねる。
8月16日から始めたCFの目標額は350万円。9月末までで、10日現在約74万円集まった。10月以後工事を始める。来年度は新たな募金を開始し、開館に向けた準備をする予定で、資料館には写真やポスター、グッズなどを並べたい考えだ。 ■亡き仲間の思い 古民家活用は、同映画にエキストラ出演し、ロケ地ガイドを長く務めた故宮内一朗さん=享年68歳=が温めてきたアイデア。4月に亡くなり、住民らが思いを引き継いだ。宮内さんらが奔走し、ロケ地証明や俳優たちの直筆サインが彫られた記念碑もあり、一体的な観光コンテンツ化を目指す。 上塘さんは「人口50人の限界集落ながら、公認ロケ地は世界でも秋目だけと聞く。リーダー的存在だった仲間を失ったのは痛手だが、文化遺産を守り次世代へ継承したい」と意気込む。 今後の資金集めや運営管理の課題はあるが、監事の桑原田さんは「今修復しないと取り返しがつかない。多くの人の協力やアイデアをもらい危機を脱したい」と強調。「世界中のファンが集い交流を深める聖地に」と夢を膨らませる。
募金はCFサイト「キャンプファイヤー」で受け付けている。3000円~30万円で、リターンは、完成施設への名前記載、オリジナルタオル、Tシャツ、焼酎、塩など。がんじん荘=0993(68)0652。 ■「007は二度死ぬ」 シリーズ5作目の英国映画で原題は「You Only Live Twice」。米ソの宇宙カプセルが謎のロケットに捕獲され両国は一触即発に。英諜報部は敵基地が日本にあると突き止め007が日本へ向かう。県内では秋目のほか、霧島連山・新燃岳(空撮)、鹿児島市の重富荘などでロケがあった。
南日本新聞 | 鹿児島
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