三谷幸喜×西島秀俊が語る“男の小ささ”「天ぷらそばで勝ち誇った自分が小さいなと思いました」
西島さん、人からもらったラブレターってどうしてるんですか
――それこそ草野が、離婚した後もスオミの写真を保存してるところとか、ああいう未練がましさはわかるところがあります。 三谷 西島さん、人からもらったラブレターってどうしてるんですか。 西島 なんでそんなことを僕に聞くんですか(笑)。 三谷 困りますよね。実際、今も持ってる持ってないは置いておいて。 西島 そうですよね。みなさんどうしてるか聞いてみたいものです。 三谷 やっぱり自分の忘れられない過去であり、書いた人の想いのこもったものだから捨てるのも申し訳ない。でも、今付き合ってる人とか奥さんに見られたらと思うとね。 西島 それはもう大変なことですよ。 三谷 でも、それって誰にでもあることだから。 西島 僕は仕事柄、むしろ残ってしまうことの怖さというか辛さみたいなものを感じてしまうんです。だから、プライベートでもあまり写真は撮らないです。僕は、『はぐれ刑事純情派』がデビュー作なんですが、『はぐれ刑事~』ってよく再放送があるんです。自分が生まれて初めて演技したような映像が定期的に電波に流れるんですよね。再放送いただけるのはありがたいことですが、正直なところ自分で見るのはちょっと恥ずかしくて、勘弁してほしいと思ったりもします。 ――では最後に。お二人がそれぞれ「俺って小さいな」と感じたエピソードを聞かせてください。 三谷 とある立ち食い蕎麦屋で天ぷらそばを食べていたら、僕と同世代で結構活躍している舞台演出家が同じ店にいて。その人はかけそばを食べていたんです。それを見て、天ぷらの分だけ俺のほうがこの人より一歩前に出ていると心の中で勝ち誇った自分に対して小さいなと思いました(笑)。 西島 この間、とある撮影で担当してくれた衣裳さんが、まだデビューしたての20代、それこそ初めてCMに出演したときにご一緒した方だったんです。みんなで雑談をしているときに「当時撮った写真があるんだけど、見る?」って聞かれて、僕は昔の写真を見るのがすごく恥ずかしくて内心ではためらっていたんですが、みんながいる手前、嫌だとも言えず。つい「ぜひ持ってきてください」って無理した自分がちっちゃいなと思いました(笑)。 ――結局その写真は見たんですか。 西島 そうですね。カラオケでものすごくうれしそうに歌ってる写真で、そんな変な写真じゃなかったから良かったんですけれど、それを見て、昔ってこんな何でもない写真を撮ってたんだなって、ちょっと懐かしくなりました。今、写真を撮ろうとすると、ちゃんとみんなカメラ目線でポーズを決めることがほとんどですよね。でも、その写真はなんでわざわざこんなところを撮ったのかもよくわからない、ただ人が歌ってるのを見ているような瞬間で、その雑で無防備な感じがあのときの空気感をちょっと思い出させてくれるみたいで、非常に感慨深かったです。 取材・文:横川良明 <作品情報> 映画『スオミの話をしよう』 9月13日(金) より全国公開 (C)2024「スオミの話をしよう」製作委員会