EV拡大のカギを握る「商用EV」 しかし課題山積! 元ディーラーが“普及の条件”を解説する
商用EVの現状と未来
電気自動車(EV)を目にする機会が増えてきたが、その多くはテスラや日産リーフのような乗用EVで、商用タイプはまだまだ少ない。今後、商用EVが増えるのか、クルマを販売する側だった立場から考えてみたい。 【画像】ド田舎一直線! これが60年前の「蓮田サービスエリア」です(計8枚) そもそも、商用EVはどのようなものがあるのだろうか。本稿執筆時点(2024年4月)で、国内メーカーから発売されている車種と、その簡単な特徴を見てみよう。 ●e-NV200 e-NV200は、日産がNV200をベースに生産する商用バンタイプのEVだ。NV200自体も街中で見かけることが少ないため、どんなクルマか知らない人も多いマイナー車種でもある。リーフと同じパワートレインを搭載しているので、走行性能自体は申し分ない。 リーフのモデルチェンジに合わせて40KWhのバッテリー容量を搭載し、航続距離はカタログスペックで300kmとなっている。先代リーフの航続距離は100kmそこそこだったため、これは進化といえる。特筆すべきは、ベースモデルだけでなく、乗用タイプもラインアップされていることだ。商用ベースとはいえ、多人数乗車が可能なEVである。 ●ミニキャブEV(クリッパーEV) 軽バンにもEVがある。三菱が出しているのはこのタイプだ。ガソリンタイプはスズキ・エブリイのOEMだが、EVモデルは三菱がかつてプロパーで生産していたものと同じボディだ。20KWhのバッテリーを搭載し、航続距離は180kmと、軽自動車のルート配送には十分な容量だ。ちなみに、三菱はこのモデルを「クリッパー」の名で提携先の日産にOEM供給している。
短距離なら活躍可能
ガソリンエンジンを搭載した商用車と商用EVを比較する場合、航続距離がどうしても気になるが、それぞれに一長一短がある。 商用EVとして販売されているクルマのラインアップからも推測できるように、商用車としては小型クラスである。そのため、市街地での使用に適している。地域によっては、食材のルート配送や郵便、宅配便など、特定のエリア内だけで利用する機会も十分にある。 一方、中長距離を運行しなければならない場合、途中でバッテリーを充電する必要があるため、タイムロスが発生し、こうした産業での利用には向かない。乗用EVと同様、短距離であればメリットはあると断言できる。