「シンヤコヅカ」“最悪で最高”の集大成 ハミ出し者を救う幻想へのダイブ
数年前まで「デザイナーを辞めたい」と絶望していた天才肌は、今はまるで憑き物がとれたように生き生きとしている。「今は、自分の中の心技体がそろった感覚。次のシーズンで、設立してちょうど10年を迎える。次は20年目に向けてのスタートにしたいから、今回のショーはこれまでの集大成のつもりだった」。そして、20年に向けてブランドとしてさらなるアクセルを踏むため、パリでの発表を目指している。「ただパリでショーすることを目的にしているわけではなくて、シンプルに世界中の人に『シンヤコヅカ』を知ってほしい。コミュニケーションがしたい。僕はハミ出し者だったけれど、ファッションとの出合いで『このままでいいんだ』と救われた。世界にいるハミ出し者の心をクリエイションで少しでも豊かにできたら、肯定できたら、こんな自分でも社会に貢献できたと思えるのかもしれない」。
小塚デザイナーにとっての“ごちそう”の一つは、ファッションを通じた他者とのコミュニケーションである。ブランドとしてスケールアップを目指しながらも、クリエイションはこれからもパーソナルな世界を伝え続けるのだろう。ずぶ濡れのストーリーテラーは、奔走するスタッフを見ながらボソッとささやいた。「こういう人たちの熱量も、僕にとっては“ごちそう”です」。