ハコスカGT-Rレーシング【2】「これだけは絶対に譲らない」GT-Rの神様が遺した青春時代の形見
【1972年式 日産 スカイラインHT 2000 GT-Rレーシング Vol.2】 【画像30枚】助手席ドア下に見えるサイド出しデュアルマフラーは迫力のレーシングサウンドを奏でる 「SIGERU WATANABE MEMORIAL AUCTION」に持ち込まれた故・渡辺茂氏のストックしていた部品の数は数千点に及び、来場していたあるGT‐R専門店の代表が「点数はもちろんですが、ここまでの幅広い種類の部品は見るだけでも目の保養になる」といわしめたほど、壮観だった。 前置きは長くなってしまったが、このサウンド・オブ・エンジン2019の走行イベントの目玉として用意されたのが、今回紹介する72年式のKPGC10レーシングだ。赤と白の日産ワークスカラーが施されたこのGT‐Rは、渡辺さんがプライベーターとしてレースに参加していたマシンで、生前は「これだけは絶対に譲らない」と語っていた青春時代の形見で、精神的支柱のような存在だ。 詳細は写真の説明に譲るとして、ドライバーとしてのエピソードに触れたい。 渡辺さんがレースに参戦したのは1976年のことだ。当時、日産のワークス活動はすでに休止しており、多くのプライベーターもGT‐Rからの乗り換えが進み、市場には破格の値段で車両や部品が流通していた。 GT‐R購入を通じて日産プリンスのスポーツコーナーに出入りし、レースに参加したいという思いが強かった渡辺さんは、当時のモータースポーツ誌で、「雨降りにラジアルタイヤでサバンナが優勝した」という山口県の厚保サーキット(現・マツダMINEテストコース)の記事に目が止まり、「猛者が集う富士や鈴鹿では勝てないが、ここなら勝てるかも」と決断。 即レースマシン4台とスペアエンジンを2機購入。それらを祖父の別荘(現在のGT‐Rサービスワタナベの拠点)に持ち込み、参戦を開始した。 主要諸元 SPECIFICATIONS 1972年式 日産 スカイラインHT 2000 GT-Rレーシング ■️ボディ:レース用ボディ、ワークスオーバーフェンダー、アクリルウインドー(フロントはガラス)、レーシングジャケット、FRP製ボンネット/ドア/トランク、ワークスフロントスポイラー、初期型リアウイング、オールペイント&軽量化(GT-Rサービスワタナベ) ■️直列6気筒DOHC S20型(1989cc:ボアφ82mm×ストローク62.8mm)、最終仕様ワークスエンジンSPEC、2本リング鍛造ピストン、チタンコンロッド、特注クランク、燃焼室排気側ペントルーフ、作用角、リフト量変更、ドライサンプ用オイルキャッチタンク、ルーカスインジェクション用機械式タコメーターユニット、各部軽量化 ■️吸排気系:ウエーバー45DCOE9、ピロボールリンケージ、ワークス(モナカ)エキゾースト、デュアルサイドマフラー ■️点火系:ワークスディストリビューター、レース仕様プラグホール&プラグキャップ+セスナ用プラグコード、MSD製STREET FIRE(CDI)■️冷却系:レース用3層ラジエーター、オプションオイルクーラー ■駆動系:クラッチ、ワークスオプションタイプ2、F仕様ミッション、アルフィンカバー付きR192デフLSD️■燃料系:レース用安全燃料タンク(100リットル)&コレクタータンク、2機掛け燃料ポンプ、フィルター、エア抜き用ブリーザー ■サスペンション:レース用ストラット、スタビライザー(F:φ21mm、R:φ12.7mm)■️ブレーキ:(F)MK63 4ポットキャリパー+φ280mmローター (R)アルフィンドラム ■タイヤ:DUNLOPスリック(F)220/575-15 (R)340/575-15 ■️ホイール:レース用ゴッディ15インチホイール(マグネシウム)(F)15×9.5J -25 (R)15×11.5J -44 ■️インテリア: レース仕様ダッシュボード、10000rpmタコメーター、KS製サブメーター(水温、電流)、YAMAMOTO KEIKI製作所製油圧計、ナルディ製ステアリング、ダッツンコンペシート(運転席)、カート用シート(助手席)、4点式ハーネス、チタン製3点式ロールバー、レース用ステアリングギアボックス(15.2:1) 初出:ノスタルジックヒーロー vol.197 2020年2月号 (記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)
Nosweb 編集部
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