ビルバオ、40年ぶり通算24度目の国王杯優勝! 世界で“唯一無二”のクラブが示した“純血表明”
■“経験”と“若さ”が揃った最終ライン
マジョルカとの決勝戦の最終ラインは、今シーズンのファーストチョイスとなっている4名が並んだ。右サイドバックのオスカル・デ・マルコスと左サイドバックのユーリ・ベルチチェは経験豊富なベテラン。とりわけ前者は、2009年夏にアラベスから加入して以降5度目となった今回の国王杯決勝で、ついにタイトルを獲得した。また、両サイドバックをこなせるイニゴ・レクエやエイバルから復帰したイマノル・ガルシア・デ・アルベニスの存在も忘れてはならない。 センターバックは、24歳のダニ・ヴィヴィアンと23歳のアイトール・パレデスの若手コンビ。昨夏に、ディフェンスリーダーのイニゴ・マルティネス(バルセロナ)が退団した中で、レサマ育ちの2選手の急成長が躍進の原動力となっている。3月にスペイン代表に初招集された前者は、今夏に控えるEURO2024のメンバー入りも狙えるほど、すでに国内有数のディフェンダーだ。 そして、イェライ・アルバレス。同選手のプロキャリア、ひいては人生においてこの優勝は計り知れない喜びになっているに違いない。2016年にトップチーム昇格を果たし、U-21スペイン代表にも選出されるなど、将来を嘱望されたイェライ。しかし、同年12月に精巣がんを患っていることが判明すると、摘出手術を行った後一旦は復帰したものの、翌年6月に再発。計1年近く、ピッチから離れることを余儀なくされた。さらに、近年は度重なるケガに悩まされ、今シーズンはここまで公式戦13試合の出場に。決勝戦直前のレアル・マドリード戦で、またしても負傷交代となり、ラ・カルトゥーハのピッチに立つことが叶わなかった。それでも今回の優勝は、多くの苦難を乗り越えたイェライを讃えるものとなったはずだ。
■多士済々のミッドフィルダー
中盤は、前述したゴールキーパーのポジション争いを凌ぐほどの激戦区となっている。シーズン開幕当初、セントラルミッドフィルダーの定位置を確保したのは、イニゴ・ルイス・デ・ガラレタとミケル・ベスガだった。しかしながら後者の負傷離脱を境に、ミランデスでの武者修行から復帰したベニャト・プラードスが台頭。決勝戦でも、パリ世代の23歳はデ・ガラレタとともに、スタメンに名を連ねた。加えて、マンチェスター・ユナイティッドとパリ・サンジェルマンで活躍したアンデル・エレーラ、“狩人”としてピンチの芽を摘みとることに秀でるダニ・ガルシア、有望株のミケル・ハウレギサールも控えている。 マジョルカ戦で同点ゴールを決めたのが、スペイン代表の常連になりつつあるオイアン・サンセトだ。プレミア方面からの関心が寄せられていた昨年に、クラブとの契約を2032年夏まで延長した“エル・シエルバ(愛称:鹿の意)”は、この先のチームの中心となっていくだろう。そしてもうひとり、今シーズンにトップチームデビューを果たしたウナイ・ゴメス。かつて『サン・マメス』のスタンドでトップチームを応援していた少年は、昨年8月のラ・リーガ第3節ベティス戦でトップチーム初得点を挙げた直後、当時自身が観戦していたゴール裏メインスタンド寄りの場所でセレブレーションに及んだ。得点後にエンブレムにキスする姿や、決勝戦では頭部に裂傷を負いながらも勇敢に戦い抜くなど、このクラブに対する愛は人一倍強い。