【ポケミク】『ボルテッカー』DECO*27さんインタビュー。ポケモン愛が溢れて止まんない! ポケモン歴や歌詞に込められたこだわりを訊く
文:竹内白州 “ポケモン”と“初音ミク”によるコラボプロジェクト“ポケモン feat. 初音ミク Project VOLTAGE(ポケミク)”。 【記事の画像(15枚)】を見る 2024年1月25日号(2024年1月11日発売)では、“ポケミク”の特集を表紙64ページに渡って大々的に行った。特集では、企画に参加しているボカロPたちへのインタビューも掲載中。 そんなインタビューの中から、『ボルテッカー』を制作したDECO*27さん、『JUVENILE』を制作したじんさん、『ミライどんなだろう』を制作したMitchie Mさん&動画チームへのインタビューを、ファミ通.comにて全文を公開していく。 今回は、『ボルテッカー』を制作したDECO*27さんへのインタビューをフルバージョンで掲載。誌面に載りきらなかったDECO*27さんの溢れる想いを最後までご覧いただきたい。 なお、2024年1月26日18:30には『ボルテッカー』のRemix楽曲『ボルテッカー (Jewel Remix)』が公開予定。カントー地方、ジョウト地方を舞台としていた原曲バージョンから、Remixバージョンでは、ホウエン地方とシンオウ地方に舞台を移しているとのこと。 「自分をポケモンのタイプに当てはめるなら、でんきタイプ」 ――まずは、ご自身の作家活動について、簡単な自己紹介をお願いします。 DECO*27 大学生のときに初音ミクという存在に出会って、虜になりました。それから楽曲作りを始めて、かれこれ15年が経ちます。 ――初音ミクに出会ったきっかけは何だったのでしょうか? DECO*27 友人にニコニコ動画を教えてもらい、初めて見た動画が、初音ミクのオリジナル楽曲でした。最初は人が歌っていると思ったんですよ。いい声だなぁと思っていました。でも、よくよく調べてみたらソフトウェアだということが分かり、衝撃を受けました。その時点でギターを弾いたり作詞作曲をやったりもしていたので、これまで自分がやってきたことと、新たに好きになったものが組み合わせられるかもしれないと思い、ボカロPとしての活動を始めました。初めて楽曲を聞いてから活動を始めるまではわりとすぐでしたね。 ――ポケモンと初音ミクがコラボすると聞いたとき、率直にどう思いましたか? DECO*27 まず、めちゃくちゃビックリしました。ポケモンが別作品のキャラクターとコラボするなんてことがあるのか、と。そのうえで、僕にお声がけいただいたことに対してうれしく思いましたね。ただそのうれしさは一瞬で通り過ぎていき、つぎの瞬間には楽曲作りの方に頭が切り替わっていました。 ――その時点で楽曲についてはどこまで考えられていたのですか? DECO*27 でんきタイプの楽曲にしよう、というアイデアが最初に浮かびました。僕は自分をポケモンのタイプに当てはめるなら、でんきタイプだと思っているんです。制作中も、アイデアが浮かんだらそのインスピレーションのままに駆け抜けていくような勢いがあって。 つぎに、恋愛のテイストも入れたいと考えました。僕の楽曲は恋愛に関するものが多いですし、僕にお声がけいただいたということは、そういうものが求められているだろうと。そしてそのふたつを掛け合わせて、「恋に電撃走る」をテーマにしようというところまで考えていました。 ――かなり早い段階で具体的なテーマまで決まっていたんですね。インスピレーションのままに駆け抜けていくというのが、まさに楽曲の通りなんだなと感じます。 DECO*27 そうなんです。ちなみに僕のことを知ってくれている人ならわかると思うのですが、僕の楽曲は歌詞にストーリー性を持たせていて、その主人公がけっこうかわいそうな目にあいがちなんですよ(笑)。そこを今回は前向きな楽曲にしたいなと思いつつ、「覚悟を決めて相手にぶつかっていくんだ」というメッセージ性は込めたいなとも思いました。 恋愛でアタックするときは恥ずかしかったり、傷ついたり、自分にもダメージがあると思うんです。そこで、威力は高いけれど、自分にも反動ダメージが返ってくるでんきタイプの技“ボルテッカー”をタイトルにしようと決めました。 ――言われてみると、傷つくことを恐れず相手に対してまっすぐにぶつかっていくボルテッカーという技は、DECO*27さんらしさとポケモン要素がぴったり重なり合うベストなチョイスだと感じます。 DECO*27 ポケモンで恋愛をテーマにすることはそうそうないと思うので、塩梅が難しいと感じていたのですが、ちょうどいいバランスで着地できてよかったです。MVではミクとピカチュウに少しずつ傷が増えていく演出があるので、そこにも注目していただければと思います。 初めてのポケモンは、『ポケモン 青』。『ポケモン S・V』では図鑑もコンプリート済み! ――DECO*27さんは以前からポケモンがお好きだったと伺いました。これまでに遊んだ『ポケットモンスター』シリーズのタイトルを教えてもらえますか? DECO*27 初めて遊んだのは『ポケットモンスター 青』でした。『ポケットモンスター 赤・緑』が流行っていたときは、僕はゲームボーイを持っていなかったので、学校の友だちがやっているのをうらやましいなと思いながら横から見ていました。その後ゲームボーイポケットを買ってもらって、ようやく自分でも遊べるようになったので思い入れがあります。 ――その後のシリーズ作品はどのくらいプレイされていますか? DECO*27 ほぼすべてのシリーズ作品をプレイしてきていますし、ほかに『ポケモンカード GB』や『ポケモン不思議のダンジョン』シリーズもやりました。『ポケモンカードゲーム』も子どものころに遊んでいましたが、最近になってまた集めたり対戦したりするようになりました。 ――かなりたくさんプレイされているんですね! 好きなポケモンについても教えてください。 DECO*27 ピカチュウです。かわいい。 ――即答でしたね! DECO*27 ちなみに、パルデア地方だとホゲータが好きです。ほかにもマンガ『ポケットモンスターSPECIAL』の影響でニョロゾ、テレビアニメを見てバタフリーも好きになりました。ゲームだけでなくさまざまなコンテンツでポケモンを好きになっていくというのも、ポケモンの魅力ですよね。『ポケカ』で強かったからゲームでも手持ちに入れよう、なんてこともあります。 ――確かに、レッド(『ポケットモンスターSPECIAL』赤・緑・青編の主人公のひとり)の手持ちや、サトシの手持ちには憧れますよね。最新作の『ポケットモンスター スカーレット・バイオレット』はどれくらい遊んでいますか? DECO*27 じつは今回久々に、発売と同時にまとまった休みをとることができたんです! これ幸いとめちゃくちゃやり込みました。今回は冒険する順番を自由に決められたじゃないですか。一応推奨される順番っていうのもあったように思うんですけど、それらを全部無視して、まずはパルデア地方の西側の人たちをすべて倒して西の覇者に。それから東側も制覇するっていう遊びかたをしていました。 ――天下統一のような(笑)。西側を制覇した時点でポケモンたちのレベルがかなり上がっていそうですね。 DECO*27 そうなんですよね。東側の人たちがすごくたいへんそうにしているのを見て、満遍なく進めておけばよかったかな……と、少しだけ後悔しました(笑)。彼らにとってみれば、シロガネ山からレッドが降りてきたようなものだったかも。 ――それは手ごわそう……! DECO*27 そんな感じでストーリーをいっきにクリアーした後は、その勢いのままにポケモン図鑑もコンプリートしました。すでに楽曲制作のお話は受けていたので、担当者の方に楽曲の完成より先に、「完成しました!」といってポケモン図鑑を見せたりなんかして。がっつり楽しんで満足してから、『ボルテッカー』の制作を本格的に始めました。 ――最新作を楽しみ切った最高の状態で制作されたものだったんですね。 DECO*27 ベストコンディションだったと思います。ちなみにいまもパルデア在住の生活を続けておりまして、先日改めてピカチュウを育てたんですよ。ちゃんとボルテッカーを覚えていて、性格はてれや、性別は♀です。 “ポケモン×初音ミク”の相性はばつぐん! ――『ポケットモンスター』シリーズの楽曲について、どんな印象を持たれていますか? DECO*27 最初にプレイしたのが『ポケットモンスター 青』、いちばんやり込んだのは『ポケットモンスター 金・銀』だったので、今回はカントー地方とジョウト地方を中心に曲やサウンドを引用させていただきました。制作するにあたり、改めて何度も聴き直したのですが、いまと比べてハードの性能の都合でトラック数や音数に制限がある中で、あれだけインパクトの強いサウンドを作れるというのは本当にすごいです。これは真似できないな、と思わされますね。 ――今回、これだけは使いたいと決めていた曲はありますか? DECO*27 ジョウト地方での『戦闘!チャンピオン』……というより、僕にとってはレッド戦のイメージが強いですね(※)。シロガネ山でレッドと初めて戦ったときのことはいまでもよく覚えています。あまりにもレベルの高いレッドのポケモンたちにやられて、“めのまえがまっしろ”になりました。当時は絶望感がありましたが、いまとなってはいい想い出ですね。 ※『ポケットモンスター 金・銀』『ポケットモンスター ハートゴールド・ソウルシルバー』のチャンピオン(ワタル)戦とレッド戦は同じBGMが使われている。 ――実際に手掛けてみて、ふだんの楽曲制作と比べていかがでしたか? DECO*27 難しいと感じた部分はとくになかったです。『ポケットモンスター』シリーズの曲は基本的にゲームを遊びながら聞くもので、各々のゲーム体験と紐づいているからこそ強烈な個性を放っていると思っています。それを楽曲の中に取り込んでも、個性は主張しつつも自然と混ざり合ってくれる感覚がありました。そもそもポケモンも初音ミクも同じ電子の世界で生まれたわけですから、相性はいいに決まっていると最初から確信していました。 ――確信されていた通り、相性バッチリでしたね。“ポケミク”のほかの楽曲も聴かれましたか? DECO*27 このインタビュー時点(2023年12月上旬実施)で公開されているものはすべて聴きました。どれもポケモンらしさはそのままに、ボカロPたちの個性も消さずに調和している印象があります。なかでも僕は稲葉曇さんの『電気予報』が好きですね。稲葉さんのファンということもあり……! ――もちろんボカロPの皆さんの実力あってこそだと思いますが、確かにどの楽曲もそれぞれの個性がうまく共存していると感じます。 DECO*27 そうですよね。とはいえ、自分が作ったものではないフレーズを引用するのは新鮮ではありました。これまでに幾度となくプライベートで聞いてきたメロディーが仕事場で流れているというのも不思議な体験でしたし、そこに自分が歌詞をつけることに対しては、自分で自分にかけるプレッシャーが半端じゃなかったですね。 ――ポケモンファンの方々が『ボルテッカー』を聴いた後、引用元のフレーズを耳にしたら歌詞が思い浮かんでくるかもしれませんね。 DECO*27 そうなんですよ! これから昔の作品やリメイク作品をプレイする子たちがいるかもしれないと想像すると、プレッシャーがすごかったです。かといって、それに押しつぶされるようなことはなく、終始楽しく制作できたなと思っています。 ――歌詞の中で、とくに気に入っているのはどこですか? DECO*27 いちばん最初の「妄想は無限大」です。最初のフレーズはものすごく悩みました。僕の楽曲がこの企画の1曲目として公開されることは伺っていたので、聴いてくれた人をワクワクさせるようなフレーズにしたかったんです。また、DECO*27を象徴するワードにしたいとも思っていました。“妄想”は僕が歌詞でもタイトルでもよく使っているワードですし、今後は誰の、どんな楽曲が公開されるのか妄想しちゃいますよね。それにこの企画が発表されたとき、それこそみなさん無限大の妄想をしたと思うんです。 ――18タイプのミクさんの相棒がどのポケモンになるか、どのボカロPさんが参加されるのか、などと、まさしくすごく妄想しています。 DECO*27 そのうえで、恋愛をテーマにした『ボルテッカー』の歌詞としても、恋する相手に対して妄想は無限大ということで自然に取り入れられます。さまざまな要素を詰め込んだ、いい歌詞が書けたなと自負しています。 ――メロディーとも絶妙にマッチしていて気持ちがいいですよね。つい口ずさんでしまいます。 DECO*27 ありがとうございます。メロディーもすごく気に入っています。“妄想は無限大”の部分は『ポケットモンスター 赤・緑』から『戦い(VSトレーナー)』のBGMを引用しているのですが、そこからすぐにDECO*27オリジナルのメロディーが入って、続けて『ポケットモンスター 金・銀』の『戦闘!チャンピオン』のBGMを引用。という感じで、つぎつぎにポケモンBGMとDECO*27メロディーが入れ替わるような作りにしました。歌が始まる部分なので、ポケモンファンと初音ミクファンの両方が、すぐに楽しめるようにしたかったんです。 ――完全に狙い通りになっているように思います。たくさんの反響があったと思いますが、いかがですか? DECO*27 とくにポケモンファンに喜んでいただけていて、本当によかったです。僕はたまたまポケモンが個人的に大好きだっただけで、今回のコラボでいうと初音ミク側のクリエイターです。ポケモンファンに向けて、楽曲を通して初音ミクのよさを届けたいという想いがありました。それを実現できてうれしく思います。もちろん、初音ミクファンが喜んでくれているのもすごくうれしいです。 ファンの圧倒的な考察力がDECO*27さんを超える!? ――動画に寄せられたコメントの中には、楽曲やMVに盛り込まれているポケモン要素を探し出して投稿されているものも多くあります。これはまだ誰にも気づかれていない、というものはあるのでしょうか? DECO*27 僕もコメントを見た限り、ぜんぶ挙げられていたと思います。むしろ、僕が意図したものより多いですね(笑)。たとえば、サビの最後にある「ビビビビビビビビビ えーいっ!」が、ポケモンを捕まえるときにプレイヤーがやってしまいがちな動作を表しているんじゃないかとか。ボールが揺れているあいだはBボタンを連打して、最後にボールがカチッと鳴るタイミングに合わせてAボタンを押すということだと思います。 ――ポケモンを捕まえるときの所作って、いろいろな流派がありましたよね。連打する派もいれば、ボールが揺れるタイミングに合わせてAボタンを押す派もいて。 DECO*27 実際、僕が子どものころはまさしくコメントで言われているように連打していたんですよ。だからそのコメントを見て驚いたんですけど、歌詞にそれを込めたかというと……そういうわけではなくて(笑)。 ――偶然の一致だったんですね! DECO*27 ほかにも、曲中に登場する“ビ”という言葉の数がちょうど27回で、僕の名前とかかっているんじゃないかというのもありました。これも「なるほど!」と思いましたね。 ――ということはそれも……。 DECO*27 偶然です(笑)。 ――まさかでした。逆に、意識して入れた要素の中で気に入っているものも教えてください。 DECO*27 メッセージウィンドウに流れる歌詞にポケモンの性格を引用したことです。ボルテッカーは物理攻撃技なので、攻撃が高くなったり低くなったりしやすい性格を入れています。“てれや”だけは例外ですが。 ――たしかに、“いじっぱり”や“さみしがり”、“おくびょう”などが入っていましたね。 DECO*27 ほかにも対戦でよく使われるどうぐの名前が出てくるなど、後半に行くほどコアな層がふふっとなれるような要素を入れているので探してみてください。 ――『ボルテッカー』は、これからも多くのファンに愛され、そして語り継がれる作品になると思います。最後に、読者に向けてメッセージをお願いします。 DECO*27 すごくワクワクする企画に呼んでいただけて、多くの人に喜んでいただける楽曲を作ることができて、うれしく思います。聴いた人が楽しくなってくれて、そして僕の大好きな初音ミクを好きになってくれたら、もっとうれしいです。今回はポケモンと初音ミクのコラボではありますが、ゲームミュージックを引用して新しく音楽を構築する挑戦でもありました。ポケモンや初音ミクが好きな方はもちろん、そうでない方もゲームミュージックの新たな可能性という観点で、1度聴いてもらえたらと思います。よろしくお願いします。 DECO*27さんが語る『ボルテッカー』MVのこだわりポイント4選! ●ハツネミクが 勝負を しかけてきた!(0:36) DECO*27 シンプルにすごく好きなシーンです。バトル前のカットイン演出は『ポケットモンスター ソード・シールド』のオマージュになっています。この演出ひとつで、一瞬のうちにゲームの世界に入り込んでしまうんですよね。 ●『ポケモン 赤・緑』風のメッセージウィンドウ(1:09~) DECO*27 ポケモンセンターのBGMをアレンジしたメロディーが流れていて、MVでは歌詞がメッセージウィンドウに表示される演出になっています。ここの歌詞は本来漢字で書いている部分も、すべてひらがなで表示するようにしていて。当時は『ポケットモンスター』シリーズの文章はひらがなで表示されていたので、そんな時代のことを懐かしみながら聴いてもらえればと思います。 ●「だってむちゅー わ!きみにむちゅー」の部分のSE(0:58~&2:22~) DECO*27 サビの終わり、歌詞で言うと「だってむちゅー わ!きみにむちゅー」の部分はゲームのSEをいろいろと盛り込んでいます。じつは1番では『ポケットモンスター 赤・緑』、2番では『ポケットモンスター スカーレット・バイオレット』というように引用元が異なるんです。その違いも意識しながら聴いてみると楽しんでいただけるかなと思います。 ●MV全体のストーリー構成 DECO*27 今回のMVはざっくり言うと、オープニングの後に1回目のバトルがあって、1度負けてしまうもののポケモンセンターでの回復を挟んでからリベンジマッチに挑むというような構成になっています。そうした流れも踏まえて聴いてもらえると、また違った楽しみかたができるかなと思います。
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