なぜジーターは引退興行で巨額を稼いだのか
キャンプイン直前の2月12日。ヤンキースのデレク・ジーター内野手(40)が今季限りでの引退表明をフェイスブックに署名入りで公開して以来、今季の大リーグは開幕から「ジーター最後のシーズン」という副題が付いた。遠征先々で功績を讃えるセレモニーが行われ、地方球団もヤ軍戦に限っては大入り満員状態に。本拠地最終戦となった25日のオリオールズ戦は消化試合にも関わらず今季最高48613人の観客が集まった。 当日の入場券はプラチナ化。チケット代理店のネットによると、1日前に正規料金20ドル(約2000円)の外野席が348ドル(約35000円)、最も高額な席は15000ドル(約150万円)にも。NYの中継テレビ局「YES」によるとジーターがサヨナラ打を放った時間帯にはピークの199万人が視聴したという。今季最終カードとなったフェンウェイパークでのレッドソックス戦も3日間超満員だった。 チケットの売り上げだけでなく、Tシャツなどグッズも本拠地と敵地で飛ぶように売れた。ネット販売サイト「fantastic.com」では背番号「2」の引退特別ロゴが入った帽子は27種類。計296点に及ぶ関連グッズは全米プラス30カ国で販売され、今季は昨年比2700%の売り上げとなった。競売も活発だった。入札500ドル(約5万円)で競売にかけられたジーターのスパイクが2300(約23万円)~2500ドル(約25万円)前後で落札され、8月にジーターが敵地トロントのブルージェイズ戦で放ったホームランボールは12500ドル(約125万円)の高値がついた。 ジーターと長年個人契約を結んできた大手スポンサー企業も引退プロモーションに便乗。7月の球宴ではナイキ社が他球団のスター選手や多くの著名人を起用したCM「Re2pect」をリリース。米国全国紙「USA Today」によると、Youtubeでの視聴者は800万人を数え、今月ゲータレードが公開した一般ファンとジーターの交流を描いたCM「Made in New York」は1週間で500万人に視聴されたという。 レッドソックスの指名打者オルティスは奇しくも言った。「That’s him. Money time」と。一体幾らの経済効果を生んだのか。単なるテレビ放映権や観客動員数だけでなく、グッズ販売、球場周辺のホテルや飲食店、関連企業への影響は計り知れない。もし、ジーターがシーズン終了後に引退を表明したらどうなっていたか。ヤンキース球団はジーターがシーズン前に引退を正式発表したことを感謝しているはずである。今季の1200万ドル(約12億円)の年俸などそっくり元が取れる利益を生んだのだから。