サンバイオが事実上の「アメリカ撤退」、窮余のリストラ策
アメリカ子会社のリストラを発表したサンバイオ。アメリカ事業からの事実上の撤退となる窮余の策だ(写真:梅谷秀司)
日本の代表的創薬ベンチャーの1社であるサンバイオ(4592)が、苦悩の色を濃くしている。 同社は7月10日、アメリカ子会社の社員22人を整理解雇すると発表した。リリースでは「22人の削減」とさりげなく書いてあるが、これでアメリカの社員数は「ゼロになる」(角谷芳広・執行役員経営管理部長)。会社自体は存続するものの、アメリカ事業の事実上の「店じまい」を告げる内容になっている。 翌11日のサンバイオの終値は、バイオ株が総じて横ばいとなった中で、前日比14円安、率にして2.3%下落の598円で引けた。終値での600円割れは、ザラ場で上場来安値585円をつけた5月18日以来のことだ。 サンバイオにとって、アメリカのリストラは大きな意味を持つ。実は、サンバイオの創業地はアメリカだ。2001年にアメリカ・カリフォルニアで産声を上げ、その後2013年に日本国内で会社を設立した経緯がある。子会社と言いつつも、アメリカがグループの源流なのだ。 しかも、製薬企業の生命線を握る基礎研究をはじめ、最新の細胞治療薬ではとりわけ重要となる製造技術の研究開発でも、長らくアメリカの子会社がグループの中心を担ってきた。 そのアメリカの事業・機能を「撤収」し、日本に機能を集中するというのだ。あくまで日本に重要機能を置く通常の日本の会社が海外子会社をリストラするのとは、その意味合いの重さがまったく異なる。 サンバイオは重い決断をした。なぜか。理由は至ってシンプルだ。それほど追い込まれている、の1点に尽きる。 いよいよサンバイオには資金的な余裕が乏しくなってきている。創業の地であり、将来の成長に不可欠な最重要市場であるアメリカ事業を存続するという、防衛ラインを死守する経営体力は現在のサンバイオには残されていない。そんな厳しい一面を白日の下にさらしたのが、今回の措置といえる。
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大西 富士男