女性の健康問題を解決に導くブレイクスルー6選、待望の新薬も、発達障害から更年期まで
5. 凍結肩(五十肩)と女性ホルモン
凍結肩(五十肩)は、その名の通り、肩の結合組織が炎症を起こして動かせなくなる病気だ。痛みを伴う凍結肩は何年も続くことがあるにもかかわらず、解明はあまり進んでいない。その理由は、凍結肩に苦しむ患者は男性より女性の方が多いからかもしれない。 閉経は凍結肩の一因になっているようだ。研究者たちは、更年期の女性の50%が経験する関節痛が、体内のエストロゲン(女性ホルモンの一つ)の濃度の減少と関係があるかどうかを調べている。最近の研究からは、エストロゲン濃度を高めるホルモン補充療法を受けた人は、凍結肩と診断される可能性が低いことが示されている。 この研究はまだ初期段階にあるが、研究者がほとんど足を踏み入れたことのない領域への最初の一歩だと言える。更年期に突入しつつある女性や、更年期の真っ只中にある女性にとって、この研究は早すぎるということはない。
6. 更年期のホットフラッシュのしくみが明らかに
2022年12月のナショジオの記事では、更年期のエストロゲン濃度の急落がホットフラッシュを引き起こすしくみが解明されたと報告した。 ホットフラッシュは女性の最大約80%が経験していて、発汗、動悸、めまい、疲労感、不安感を伴うことが多いという。黒人やネイティブアメリカンで特に著しく、1日に数回起こり、平均4年間も続く。 これまでの研究により、エストロゲンの減少が、脳の視床下部にある体温を調節しているニューロン(神経細胞)群に影響を及ぼし、不適切な発火活動を引き起こすことが明らかになっている。製薬会社はこれらのニューロンの活動を抑えてホットフラッシュを和らげる薬の開発を進めてきたが、その一つである「フェゾリネタント」が2023年5月に米国で、同12月には欧州連合(EU)でも承認された(編注:日本では最終段階の臨床試験が始まっている)。 「中年になった女性のほぼ全員がホットフラッシュを経験するのですから、その生物学的なメカニズムが10年前まで解明されていなかったことは、むしろ驚きです」と、米ノースカロライナ大学医学部産婦人科のジュネビーブ・ニール・ペリー氏は語っている。
文=Amy McKeever/訳=三枝小夜子