新築・解体の両方で利用可…超高層ビルの工期短縮、大成建設が施工システム開発
大成建設はジャッキ工法の統合により、超高層ビルの建設と解体の両方に利用できる施工システムを確立した。軽量なフレームユニットで建物全体を覆い閉鎖空間で作業を行うため、天候や場所などの制約を受けにくく、施工品質の向上や工期短縮を図れる。遠隔操作やロボットの技術との組み合わせにより、将来は施工の機械化・自動化につながる期待もある。現場での適用事例を段階的に増やしながら早期の実用化を目指す。 【写真】大成建設の「テコアップシステム」を使った施工 大成建設は高さ100メートルを超える超高層建物向けの解体工法として、屋根を支える仮設柱を設置し、ジャッキで屋根を下降させる「テコレップシステム」を開発。防音・防塵を目的に閉鎖空間を設けて最上部から徐々に解体するため、空き地のない敷地、近隣の制約条件が厳しい建物にも有効。さらに、その改良版として、鉄筋コンクリート(RC)造の超高層建物にも適用可能とした「テコレップLightシステム」も開発済みだ。 一方、解体工法の開発と運用で培ったノウハウを応用して開発したのが、鉄骨フレームをワンフロアごとに上昇させて効率的に建築作業を進められる「テコアップシステム」。大型のタワークレーンが不要で、フロアに支柱を入れるための開口部を用意する必要がない。クレーンの設置場所を自由に決められるため、従来よりも小型のクレーンを使った施工が可能となる。 今回、汎用性の向上を狙いに二つのシステムでそれぞれ使う部材を規格化。両方のシステムで共通して使用できる形状・寸法に改良したことで、作業の度に部材を製作する手間が不要となり、施工品質の向上や工期短縮、コスト削減といった利点を引き出せる。 新築と解体の両方に使える汎用性の高さに加えて、閉鎖空間で作業できるため雨天時などでも滞りが生じにくい。また都心部のように他の建物と近接する地域での作業にも利用しやすい。 新開発の施工システムの実用化に向けて、すでに現場での適用を進めている。新築に関しては札幌市東区で40フロア分の施工に、解体については東京都新宿区で二つのビルの解体にそれぞれ適用した。 同社は新開発の施工システムを「建築生産システムのプラットフォーム」(市原英樹建築本部生産技術イノベーション部専任部長・開発機械化推進室長)に位置付けている。担い手不足や技能者の高齢化の進行など建設業界が直面する課題を踏まえ、同システムを基盤として使いながら、さまざまな先端技術と融合することが作業の一層の効率化につながるとみている。 特に都心では、再開発ラッシュに伴って解体工事の増加が見込まれる。遠隔操作やロボット技術との融合を図りつつ、まるで工場のように建設現場の作業を自動化・機械化するための取り組みが今後さらに本格化しそうだ。