ひとつの問いが示す、あなたのコーチングに影響を与えているもの
「コーチをつけることによって得られる最大の価値とは何か?」 あなたはコーチとして、この問いにどんな言葉で答えますか? この問いは私の密かなマイブーム。最近コーチ仲間に次々とこの問いを投げかけては、対話を楽しんでいます。なぜならこの問いに対してどのような言葉を持っているかによって、そのコーチのコーチングが決まるのではないかと思うからです。 これまで、この問いを投げかけて、さまざまな考え方に触れてきました。今回は代表して2人のコーチの言葉を紹介します。 コーチ歴5年のAさん 「コーチがつく価値は、ラーニング・アジリティ(学習俊敏性)が高まることだと思います。ラーニング・アジリティが高い人は、どんどん成長して自分の可能性を広げていくことができるので、結果的にチャレンジングな目標を達成する確率も上がると思うんです。コーチがつかなくてもラーニング・アジリティは上げられるけど、コーチがついたほうが、遥かに成長角度を高めることが出来ると思います」 私はAさんに続けて問いました。 「あなたがコーチをするときは、どんなことにフォーカスをしているのですか?」 「ラーニング・アジリティの高め方は人それぞれなので、まずはクライアント自身が自分のラーニング・アジリティとどのように向き合っているのかを客観視できるようにコーチングをしています。 もう1つはフィードバック。私はフィードバックはラーニング・アジリティを維持向上するのに必要不可欠なものだと思っているので、クライアントとの間でフィードバックを交換することは結構意識しています。さらに言えば、コーチ自身が自分のラーニング・アジリティとどう向き合っているかも大切ですよね」 Aさんをコーチにつけたら何が得られるのか、どのようなコーチングを受けられるのかがイメージできて、Aさんのコーチングを受けてみたいと思いました。 コーチ歴2年のBさん Bさんは「価値とは何か?」の問いに対して、最初はうまく言語化できない様子でした。しかし15分ほど対話をしていく中で、最後はこんなことを話してくれました。 「多くの人が自分に嘘をついたり、自分自身に対して本当の気持ちをごまかしたりしながら日常を生きているところがあると思うんです。自分は本当は何を考えているのか、どうしたいと思っているのか、何を感じているのかについて向き合って、正直になることをコーチングは助けてくれます。これは自分自身がコーチングを受けて実感したことなんです。過去の私がそうだったように、意外と自分に正直に向き合うのって難しかったり、不快感があったりするので、コーチの助けはとても重要だと思います」 30分ほど対話をした後、Bさんから思いがけず感謝の言葉をもらいました。 「話せてよかったです。あるクライアントさんへのコーチング・セッションが上手くいかなくて、次回はどんな風にコーチングを進めようか迷っていたんです。今日、コーチングの価値について話してみて、自分がコーチとしてやるべきことが明確になりました」 そして、この対話からさらに2週間後、Bさんから悩んでいたクライアントとのコーチング・セッションがとても良い時間になったという笑顔の報告までいただきました。 これらのことを逆説的に考えてみれば「コーチがつく価値とは何か?」について、あやふやな言葉しか出てこないコーチのコーチングとは何たるや。