「行政による人権侵害を考える会・関東」発足 「官製ヘイト」に抗う
行政が率先する差別
被害の訴えをなかったことにする態度に「少数だからこそ人権が侵されるという側面を無視して多数派の論理で切り捨てる。それを行政が率先して行なっている」と金さんは指摘する。「新型コロナ感染防止のマスクを埼玉朝鮮幼稚園に支給しない理由も『転売されるから』という無茶苦茶なものだった。だが、どれだけ破綻しても間違いを認めず、要はこちらに問題があるとみなされる。行政は『死ね』というヘイトスピーチはしないが、やっていることは差別団体と同じだし、行政だからより怖い」。 宮﨑准教授が強調するのも、差別を正当化し煽動する官製ヘイトの暴力性だ。「行政による人権侵害は人々の間に線を引くものだ。補助金停止は表面的には金銭の問題だが、朝鮮学校の子どもたちは排除してもよい、在日朝鮮人は権利の枠外に置かれてもよいという社会の雰囲気を強くつくった。それによって朝鮮学校への攻撃やヘイトスピーチが頻発した」。 戦時中、非人道的に扱われて命を落とした朝鮮人労働者の追悼碑を群馬県が粉々にして撤去した問題にも言及し、「死を嘆き悲しまれない人々の生は生きるに値するものとはみなされず、その生を保障する条件が社会的に確保されない。哀悼が不可能になることで、生きるに値する者とそうでない者を分ける線が引かれた」と説く。 外国ルーツの人から障害者、性的マイノリティ、被差別部落出身者までを広くヘイトスピーチから守る先駆的な答申を無視して凡庸な条例でお茶を濁した相模原市が示すように、行政は差別の被害から目を背ける。会見後、取材に応じた宮㟢准教授は「行政は人権侵害をする。だからこそ包括的な差別禁止法と、行政から独立した人権救済機関が必要だ」と指摘した。
石橋学・『神奈川新聞』記者