5日先まで水温や潮の流れを予測 県の研究機関などが開発(千葉県)
県水産総合研究センターは、海の水深別に、水温や潮の流れの向き・速度を5日先まで予測する「海況予測システム」を開発した。昨年から運用が始まっており、漁業者らの操業の効率アップが期待されている。 これまで漁業者は、人工衛星の観測による海面水温や黒潮の現況の情報しか入手できず、「魚が回遊する深さの水温や潮の流れが分かれば、効率よく漁獲できるのに」「急潮(突発的な速い流れ)を予測できたら、定置網の被害を軽減できるのでは」といった声が漁業者から寄せられていた。特に、海面と深海では、夏の水温差が20度以上あったり、潮の流れが全く逆だったりすることもあるという。 このシステムは、水産総合研究センターが、県水産情報通信センター、県水産課と共同で開発。業者に委託して、500メートルメッシュの地点ごとの水温と塩分で水の密度を計算し、潮の流れを算出するプログラムを作成した。房総半島や伊豆諸島の海域の表層から水深600メートルまで、深さごとに水温と潮の流れをスマートフォンなどで確認できる他、1時間ごとに5日先までの予測も見ることができる。
漁業者(定置網漁船など12隻)と県の調査船が水温と塩分を観測し、計算値を補正する体制が構築され、予測精度も向上。定置網の漁業者からは「潮の流れの情報は、出漁の判断になるので毎朝見ている」、キンメダイ漁業者は「海面下の流れが分かるので、漁具を降下する際に参考にしている」などと高く評価する声が寄せられているという。 水産総合研究センター資源研究室の尾崎真澄室長は「陸上で随時、海の中の様子が分かり、燃油が高騰する中、漁業者は効率よく操業できる。釣り人や漁船以外の船の航行にも活用できる」と話している。 今年度は、定置網の観測ブイによる観測値で計算値を補正するなど、予測精度のさらなる向上や、いつ急潮が起こるかを一目で確認できるような情報の提供を目指している。 サイトは、「千葉県水産情報総合利用ネットワーク」から。無料で利用可能。