「もう限界です」残業207時間、100日休みなし…医師は26歳で命を絶った 上司は 「俺は年5日しか休んでいない」と豪語 医者の「働き方改革」は可能か
2022年2月ごろ、大阪府の高島淳子さん(61)は、1人暮らしの次男・晨伍(しんご)さんの様子に異変を感じた。息子は医師。神戸市にある「甲南医療センター」の消化器内科に勤務し、毎日、自宅を早朝に出て深夜に帰宅する日々が続いている。土日もない。 【表】勤務医の残業規制、9割守れず…「不可能」
以前から2週間に1回程度、神戸市の下宿先に寄って掃除をしたり、差し入れをしたりしていた。ただ、きれいだった部屋が次第にゴミが散乱するようになっていった。冷蔵庫にはゼリー飲料しか入っていない。 明らかな過重労働。医師の仕事が一般に大変なことは知っていたが、精神をむしばまれるほど働かせるのはやっぱりおかしい。でも、どうすればいいのか。心配する淳子さんの前で、晨伍さんはさらに危険な状態になっていった。(共同通信=禹誠美) ▽「俺は1日20時間働いた」 淳子さんは、晨伍さんがかつて「優しい上級医になりたい」と話していたことを覚えている。消化器内科医の父の背中を追って医師という夢をかなえ、センターで研修医として働き始めたのが2020年4月。 しかし、22年2月に消化器内科に配属されると、疲れた様子を見せるようになった。 職場の様子を尋ねると、指導医とのこんなやりとりを明かした。
「忙しくて勉強する時間がないと相談したら、『俺は1日20時間働いていた。年に5日しか休んでいない』と言われ、説教された」 5月のゴールデンウィークに気分転換できれば。そう思って淳子さんは食事に誘ったが、「行きたくない」と言うようになった。最終的に食事には行ったが、トイレに行き吐いていたという。「心ここにあらず。早く帰りたいと言っていた」 ▽「吐き気が止まらない」 ゴールデンウィーク明けに届いたメッセージには「土日も連休も休まれへんねん」とつづられている。その週の金曜に週末の予定をメッセージで尋ねると、電話が鳴った。出ると、電話口の向こうで晨伍さんが泣いている。「100%無理。吐き気が止まらない」 心配でたまらず、車で息子の勤務先へ。車に乗せると、「もう無理や」と取り乱した様子で泣き出した。聞けば、仕事が多忙すぎて学会発表の準備が間に合わないのだという。 「延期してもらうのは」と提案しても「あかんねん」と繰り返すだけ。