「もう限界です」残業207時間、100日休みなし…医師は26歳で命を絶った 上司は 「俺は年5日しか休んでいない」と豪語 医者の「働き方改革」は可能か
「休ませてもらおう」と提案したが「訴えても無理。休職したら二度と戻れない」 とりつく島がない。翌16日も車で迎えに行ったが、車内で同じように泣き出した。ただ、最後に「ありがとう」と言われた。 晨伍さんは17日、自宅で死亡した状態で発見された。近くに遺書が置かれ、「限界です」と書かれていた。まだ26歳だった。 ▽長時間労働だけ?職場環境も… 過酷な勤務実態は、西宮労働基準監督署の調べで明らかになった。亡くなる1カ月前の残業時間は207時間、連続勤務は約100日間に及んでいたという。23年6月、自殺は長時間労働が原因として労災認定された。 淳子さんら遺族は、長時間労働に加えて職場環境の悪さも原因だったのではないかと考えている。淳子さんは、晨伍さんのこんな言葉を覚えているという。 「みんなが背中を向けていて、楽しいことが一つもない」 晨伍さんの兄も、職場環境の悪さが目についたと語る。兄も医師で、大阪府内で勤務している。同じ医師という立場で、弟が置かれていた状況が想像できるという。
「弟は同期がいない職場で先輩と同様の業務を割り当てられていた。日曜診療のため、土日も病院に行かねばならなかった。バスがない早朝にタクシーで家を出て、深夜にタクシーで帰宅。職場はミスをしたら必要以上に叱責されるような雰囲気の悪さで、上司のフォローも薄かったようだ」 ▽残業上限に「収まらない」が9割 医師の長時間労働は現在、社会問題になっている。4月からは、大学病院などの勤務医の残業時間に罰則付きの上限を設ける「医師の働き方改革」が始まる。 共同通信が1月末~2月に全国の特定機能病院(88病院)を対象にしたアンケートでは、回答した57病院の9割が、新たに始まる残業時間の上限規制に「収まらない」とした。過重労働解消は一筋縄ではいかない状況だ。 晨伍さんの兄も勤務医の1人として、医師の働き方改革に疑問を呈している。 「そもそも医師の労働への意識、関心が低いことが過労という問題の根元にある。根本解決のためには意識を高めないとならない。それには労働研修を義務化するなどしつつ、多忙な医師が部下の医師の労務管理を直接的に行うのではなく、人的資源を整え、労務管理部門を別に設けるなども必要だ。そうした医療機関に対しては、労務管理の先進として、報酬の加算を設けることも一案だ」