「退職代行」6人に1人が利用、企業も4社に1社が経験 なぜ利用されたのか...企業はよくよく考えよう/マイナビ・宮本祥太さん
退職代行の台頭で、「退職しやすい状況」が広がる相乗効果
J‐CASTニュースBiz編集部は、調査をまとめたマイナビのキャリアラボ研究員宮本祥太さんに話を聞いた。 ――近年、退職代行が台頭してきた背景は、ズバリ、なんだと思いますか。 宮本祥太さん 直近1年間で利用した人が16.6%という結果が示すように、転職者の約6人に1人が退職の手段として退職代行を利用していることになるので、低いと言えない数字であると考えます。年代別では、20代が18.6%で最も高く、若い人ほど退職代行のニーズが高い傾向も調査結果からうかがえます。 これは、雇用の流動性が高まり、転職する人・転職を希望する人の増加に伴い、退職を考える人が増えていることが前提の要因として考えられます。 そのうえで、退職代行の存在が世間に認知されはじめ、これまでであれば自力で退職することが難しかった人にも「退職しやすい状況」が生まれたこともあり、退職代行の利用が広がっているものと考えます。 ――つまり、相乗効果ということでしょうか。しかし、退職代行を利用した理由の上位に「退職を引き留められた」「自分から言い出せる環境にない」などが並びます。こうしたトラブルは昔からあったし、また、労働者には退職する権利もあるはずなのに、なぜ最近こうした問題が浮上するのでしょうか。 宮本祥太さん こうした問題は昔からあったのかもしれませんが、退職代行という企業と求職者の間に立つようなサービスが出てきて、その認知が広がっていることによって、問題が表面化しているのではないでしょうか。
過酷な就労やハラスメントで退職を考える人には、救いになる
――退職代行の利用者と、今後の利用意向に「営業が上位にくる理由は何でしょうか。また、企業側でも利用者に「金融・保険・コンサルティング」「IT・通信・インターネット」業界が目立ちます。 宮本祥太さん 退職代行を利用する目的は、その人が置かれている職場環境や退職理由によるところが大きいため、一概に職種・業種の上位の理由を説明することは難しいです。 そのうえで「営業」の職種に関して言えば、業務が属人化しているケースも多く、担当顧客・担当案件が変わるというリスクを考えると、仕事を辞めにくく、会社側から引き留められやすい職種であることが一つ考えられます。 また「金融・保険・コンサルティング」「IT・通信・インターネット」の業種、「営業」の職種の傾向としては、雇用の流動性が高く、採用ニーズが高い分野です。就業者目線で見ると、そもそも退職する人が多い属性であることに加え、スキルを持っていれば転職先の選択肢も少なくありません。 また、企業目線では、需要が高い分野だからこそ、自社の人材流出による損失は大きく、その分退職の引き留めなども多いことが推察できます。雇用の流動性の高さが退職する人の分母を押し上げ、さらに、企業の雇用ニーズの高さが「退職しにくさ」を生みだしていることが、一つの要因として考えられます。 ――なるほど。ところで研究者として、転職業界に退職代行が台頭することは望ましいことだと考えますか。利用するうえでの問題点や課題があるでしょうか。 宮本祥太さん 望ましいか望ましくないかの直接の回答ではありませんが、退職代行を利用した理由をみても、引き留めや伝えづらさが起因する傾向があり、「辞めたくても動けない」ためにサービスに頼る人が多いことが予想されます。 また、過酷な就労やハラスメントが原因で退職を考える人にとっては、直接上司や人事に伝えることが難しい状況も考えられます。このように、ネガティブな環境から抜け出す手段として退職代行の利用は大きな意味があると思います。