双日、大気中の二酸化炭素を回収する装置を開発 農業活用で光合成促進 月刊Biz・スイッチ
温室効果ガスの削減が課題となる中、大手商社の双日が大気中の二酸化炭素(CO2)を回収する事業を始めた。大気中からCO2を直接回収する技術は「ダイレクト・エア・キャプチャー(DAC)」と呼ばれ、経済活動に制約を与えないことから脱炭素の有力な手段とされている。第1弾として農業用DAC装置を開発し、九州大学や全国農業協同組合連合会(JA全農)などと実証実験を11月に開始した。DAC装置の開発は大手商社で初めて。 【写真】双日子会社のカーボンエクストラクトが農業用に開発したCO2回収装置 DAC装置の大きさは高さ約200センチ、幅約160センチ、奥行き約180センチ。CO2だけを通す特殊な膜を何層にも重ね、大気中のCO2を濃縮しながら回収する。詳細は非公表だが、膜の厚みはナノメートル(ナノは10億分の1)レベルという。開発したのは双日子会社のカーボンエクストラクト。双日が昨年5月にDAC事業を行うために設立した。九大も出資する。 実証実験は神奈川県平塚市にあるJA全農の研究施設で始めた。回収したCO2は配管で農業用ハウスに送り、トマトに吸収させることで温室効果ガスの削減につなげる。CO2は植物の光合成を促すことから、濃度の高いCO2で収穫量も増やせる。 ハウス園芸ではCO2発生装置が使われているが、灯油やガスを燃焼させるタイプが一般的だ。これをDAC装置に置き換えれば、化石燃料由来のCO2を減らせるため、いわば〝一石三鳥〟になる。 当面、DAC装置は農業用になるが、オフィスや商業施設など人が集まる場所で使えば効率的にCO●を回収できるという。装置の商用化は来年以降を目指している。双日石炭・カーボンマネジメント事業部の齊藤秀副部長は「街の中で地道に広げていけば大規模な回収設備にもなり得る」と話している。(佐藤克史)