【和田彩花のアートさんぽ】屋外彫刻や椅子のコレクションなど展示以外の見どころも満載──埼玉県立近代美術館
大学院で美術史を学び、現在もさまざまなメディアでアートに関する情報を発信している和田彩花さん。2022年からはフランス・パリに長期滞在し、「アート」をキーワードにパリでの日々を綴った「和田彩花のパリ・アートダイアリー」を経て、和田さんの新エッセイがスタートしました。 【全ての画像】和田彩花のアートさんぽ/屋外彫刻や椅子のコレクションなど展示以外の見どころも満載──埼玉県立近代美術館 本連載では、展示内容や収蔵品、歴史や建物などに特徴がある都内近郊の美術館や博物館、ギャラリーなどを訪問。大規模な企画展が開催されているような美術館とは異なり、地域に根差した美術館や個性的なアートスポットを取材し、和田さん独自の視点でその魅力をご紹介します。 じっくりとアートと向き合う時間を過ごせる、お気に入りのスポットを探しに出かけてみませんか。(ぴあアプリ/WEBより転載) 北浦和公園の木々の紅葉と銀杏に見惚れていると、美術館が見えてきましたよ。ここは、埼玉県立近代美術館。 美術館の周辺や、公園内の「彫刻広場」には、国内外の作家による30点近くもの屋外彫刻が点在。また、公園の中央には音楽に合わせてリズミカルに躍動する「音楽噴水」もあり、美術館に入る前から来館者を楽しませてくれます。 今回は、1月13日(月・祝)まで開催中の『没後30年 木下佳通代』を中心に紹介します。お話しを聞かせてくれたのは、埼玉県立近代美術館学芸員の佐藤あゆかさんです。
企画展と関連した特集展示などが見られる常設展示
まずは、4000点以上の収蔵品から厳選された作品を見られる1階の常設展示室へ。こちらでは年4回に分けて、企画性の高い展示が行われています。 「今回は3つのセクションを設けて、コレクションを紹介しています。まず、企画展『没後30年 木下佳通代』と関連させた『戦後日本美術の開拓者たち』。次に、特集展示として埼玉ゆかりの彫刻家『特集:木村直道』。一番奥にあるのが、当館の名品を紹介する『セレクション』のコーナーになっています」(佐藤さん) 「戦後日本美術の開拓者たち」では、具体美術協会に所属していた元永定正さんの《聖火》などが展示されています。 「こちらの作品は、64年の東京オリンピックに関連して制作されたものです。キャンバスを撓ませ、そこに絵の具を流して描かれていて、偶然性と作為が融合している作品です」 奥のスペースでは、壊れたもの、捨てられてしまったものを集めて組み合わせることで、別のちょっと面白いイメージを作る木村直道さんの作品が紹介されています。木村さんは英語が得意だったため、タイトルには英語の回文が使われているものもあるんだとか。埼玉県立近代美術館では、収集方針として近代に活動した埼玉ゆかりの作家と、彼らに影響を与えた西洋の作家を大切にされているようです。そのため、印象派やそれ以降の作品も多く収蔵されているんだそう。「セレクション」のコーナーで今回展示されていた作品で一番年代の古いものでは、ドラクロワの作品がありました。