楽天G、今年3度目のドル債発行へ-利回り8.375%程度で需要調査
(ブルームバーグ): 楽天グループは今年3度目となるドル建て社債の発行に向け投資家の需要を調査しており、参考利回りとして8.375%程度を提示した。事情に詳しい関係者が明らかにした。
楽天Gのドル建て債は4月以来で、当時は償還期間5年のドル債を利回り9.8%台後半で起債していた。
今回発行するのは償還期限の定めがなく、発行から5年後に償還(コール)が可能な永久劣後債NC5。発行額は最大5億5000万ドル(約820億円)とし、当初の5億ドルから増額した。米国東部時間の4日午前9時に需要の受付を締め切り、今週中に発行条件を確定する。同社債には、S&Pグローバル・レーティング(S&P)が発行体格付けより3段階低いシングルBを付与する予定だ。
巨額の設備投資を費やしたモバイル事業で損失を計上し、信用格付けが低下した楽天Gは、格付けがトリプルB以上の投資適格級が大半を占める日本市場よりも海外市場への依存度を徐々に高めている。今年は1月から4月にかけて総額38億ドルをドル建て債で調達した。米国のハイイールド債市場で日本の発行体は珍しく、投資家にとって希少性が高いため、分散投資の面から一定の需要は見込まれる。
米国では起債に追い風が吹いている。連邦公開市場委員会(FOMC)の利下げと経済のソフトランディング(軟着陸)への期待から、ハイイールド債のスプレッド(上乗せ金利)を示すブルームバーグ指数は11月に2007年以来の低水準に縮小し、現在も260ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)程度と、歴史的な低水準で推移している。
楽天Gは金融子会社の株式売却に加え、モバイル事業の損失も減少傾向にあり、信用力は徐々に改善に向かっている。S&Pは5月、25年末までに満期が到来する社債の償還資金にめどがつき流動性が改善することや、モバイル事業の契約回線数の純増基調維持などを理由に、同社の格付け見通しを「ネガティブ」から「安定的」に引き上げた。